新世代衛星観測の同化がもたらす、台風と大気上層場との相互作用メカニズムの解明
【研究キーワード】
衛星データ同化 / 台風上層場 / ひまわり / 相互作用 / 台風上層場相互作用 / 風ライダー / 外出流 / トラフ / 寒冷渦 / 衛星データ / 台風 / 同化 / 上層解析
【研究成果の概要】
本研究は、2つの課題「1. 衛星データ同化の高度化による、高精度な大気上層解析場の構築」「2. この解析場を用いた、台風と大気上層場の相互作用メカニズムを解明」からなる。
課題1では、3つのサブ課題(①ひまわり全天候同化、②マイクロ波陸域利用、③衛星風ライダー(DWL)利用)を進めている。サブ課題①では、雲を考慮した観測誤差モデルの高度化(相関を考慮)やバイアス補正、最新版の放射伝達モデルを導入した。同化実験から特にバイアス補正の影響が大きいことが分かった。サブ課題②は、動的にマイクロ波陸上射出率を推定する手法を開発し、降水判定処理が予測改善に大きな影響を与えることが分かった。サブ課題③は、DWLを搭載したAeolus衛星同化処理を改良し、上層風場の更なる改善や台風の進路予測を改善した。
課題2では、④寒冷渦等の影響評価、⑤台風外出流の影響調査、⑥トラフや偏西風との相互作用評価、という3つのサブ課題を実行している。サブ課題④は、2018年台風第12号について、非静力学大気波浪海洋結合モデルを用いて数値計算を実施し、台風予測不確実性への影響は海洋結合よりも大気初期値の方が大きいことが分かった。さらに海洋結合の効果は、台風域の潜熱や降水量の減少、強化抑制だけでなく、寒冷渦域での潜熱や降水量減少、高渦位分布にも影響し、台風進路予測にも影響を与えることが分かった。サブ課題⑤では、2019年台風第15号が過去最強の強度で上陸した理由を明らかにするため数値計算を行った。日本沿岸の水温・大気の条件が台風にとって好ましかった一方で、台風の構造は理論が示すような外出流の構造では決められず、理論に課題があることが示唆された。サブ課題⑥では、2021年の台風について総観場を調査し、台風第8号の不規則な進路や 台風第19号の大きな進路予報誤差に上層擾乱が影響していた可能性を示した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
和田 章義 | 気象庁気象研究所 | 台風・災害気象研究部 | 室長 | (Kakenデータベース) |
石井 昌憲 | 東京都立大学 | システムデザイン研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
宮本 佳明 | 慶應義塾大学 | 環境情報学部(藤沢) | 准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)