環境DNAを用いた全国の河川におけるニホンウナギの分布・生息量推定
【研究分野】生物資源保全学
【研究キーワード】
環境DNA / ニホンウナギ / 河川 / 分布 / 河川構造 / 分布北限 / 海洋保全 / 海洋資源 / 環境調和型農林水産 / 生態系修復・整備 / 海洋生態
【研究成果の概要】
本研究では,環境DNAを用いて,日本全国の河川において,絶滅危惧種に指定されているニホンウナギの分布を確定し,そのバイオマスを推定することを目的としている。
今年度も,昨年度に引き続き,全国の河川下流~河口域において採水を行った。2019年度は,167ヶ所で採水した。環境条件として,水温,電気伝導度,川幅,河口からの距離も同時に測定した。採水サンプルから水中有機物のDNAを抽出し,2017年度に作成したニホンウナギの種特異的プライマーを用いてDNA分析を行った。環境DNAの分布と環境条件との関係を解析したところ,日本国内の河川におけるニホンウナギの分布やバイオマスは,ほぼ仔魚期の輸送環境によって決まることが分かった。そこで産卵場から卵稚仔の輸送をシミュレーションしたところ,地球温暖化に伴って将来日本へのウナギ仔魚の輸送が減少する可能性も示唆された。
また堰が存在する河川においては堰の上流側と下流側で採水とウナギのサンプリングを行い,環境DNAを分析した。その結果,堰がニホンウナギの遡上を妨げており,その分布に影響を及ぼしていることが明らかとなった。特に200mm以下の小型の個体は,堰が増えるにつれその上流側で個体数が有意に少なくなり,小型個体は堰を超えて遡上しづらい状況にあることが分かった。
上記に加えて,環境DNAの分解に関する実験を行った。ウナギを10℃~30℃ の5つの水温区に保った水槽に入れて飼育したのち,水槽から水を取り出し6日間保管した。その間,毎日環境DNA濃度を測定した。その結果,環境DNA濃度の減衰率kと水温Tとの関係はk = 0.02T + 0.18で表され,水温が高いほど分解率が速いことが分かった。
【研究代表者】