生分解性ポリマーの分子設計と生分解機構の研究
【研究分野】有機工業化学
【研究キーワード】
ポリマー / 高分子電解質 / 機能性 / 生分解性 / 分子設計 / 微生物 / 酵素 / 生分解機構
【研究成果の概要】
機能性を有する水溶性ポリマーに生分解性を付与するための分子設計としてポリマーに種々の酵素反応に活性を示すことが予想される官能基を種々の位置に導入する方法について検討を行い、得られたものについて、生分解性及び分解菌の単離同定と分解機構の推定を行った。今年度は特にラジカル共重合によりポリアクリル酸鎖などのポリカルボン酸鎖に容易に導入が可能で、かつ前年度の研究で生分解性が認められたビニルオキシ酢酸について詳細な検討を行った。ポリビニルオキシ酢酸(PVOA)は、その分解菌を土壌より集積培養法により単離を行った結果Bacillus cereusなど8菌株が得られた。これらはいずれも細菌であり、分解様式は菌株によって異なったが、いずれもPVCAを分解質化することが確認され、またアクリル酸-ビニルオキシ酢酸コポリマーも同菌によって分解質化されることが認められた。同様にアクリル酸-ビニルアルコール系コポリマーも水酸基の導入により生分解性を示す様になることが確認された。分子内にエーテル結合を導入したポリカルボン酸を系統的に合成したが、これらのうちエポキシコハク酸の重合より得たポリコハク酸が生分解性及び機能性にすぐれた外は、相当するエーテル結合を含まないポリカルボン酸に比べて生分解性の向上は見られたものの、機能性は低下した。分子内にエステル結合を導入したポリマーは生分解性の面では特に顕著な生分解性の向上が認められたが、カルボキシラート密度がエーテル結合の場合に比べさらに低下することに起因し、機能性の低下が顕著に見られ、今後、この面での分子設計的な検討が必要とされるものと考えられる。生分解性の点から見れば、ポリマーの主鎖中にエステル結合を導入することが最も効果的であることが見い出され、このようなポリマーを得る新しい重合法の検討も必要とされるものと考えられる。
【研究代表者】
【研究種目】一般研究(C)
【研究期間】1985 - 1986
【配分額】2,200千円 (直接経費: 2,200千円)