浮遊幼生期に着目した深海熱水噴出域固有動物における分散機構の解明
【研究キーワード】
深海 / 熱水噴出孔 / 腹足動物 / 浮遊幼生 / 分析化学 / 形態観察 / 集団遺伝学 / 生態 / 底生生物 / 初期生態 / 海洋分散 / 生物地理 / 深海化学合成生態系
【研究成果の概要】
本研究では、海底から表層圏を範囲に、深海熱水噴出域固有動物の浮遊幼生における生態、行動、鉛直・水平分布の包括的な調査を行うことで、分散機構を体系的に明らかにし、幼生分散が熱水域生物群集の成立、生態系の機能および物質循環に果たす役割を評価する。
付加成長する殻体をもつ貝類は、殻の形態観察や化学分析により個体の成長履歴を追うことができる点で、幼生分散研究において優れた分類群である。本研究では、深海熱水域固有腹足類の幼生殻について初の化学分析を行い、浮遊幼生期における生育履歴の復元を試みた。酸素安定同位体比に基づく生育水温の推定では、解析に用いたシンカイフネアマガイ類の個体全てが、浮遊幼生期に海洋表層と同程度の水温を経験していることが示唆された。さらに、二次元高分解能二次イオン質量分析法NanoSIMSを用いた貝殻微量元素分析の結果、上述種個体の幼生殻は、成体の殻に比べて熱水環境水に特徴的な元素の含有量が低いことを明らかにした。これらは、浮遊幼生期に深海熱水環境から表層環境へ鉛直移動し分散する生態を示すデータと考える。貝殻酸素安定同位体比および微量元素分析に基づく本手法は、深海熱水域固有軟体動物の幼生分散復元にあたり極めて有効であると期待される。本年度は、16th Deep-Sea Biology Symposiumにオンライン参加し関連研究の情報を収集するとともに、2021年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会自由集会「分野横断で挑む海洋幼生生態学」を企画開催し、成果発表を行った。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)