リグニンとシリカの段階的分離によるワラ類の酸素・弱アルカリパルプ化法の開発
【研究分野】生物資源科学
【研究キーワード】
リグニン / イナワラ / バイオマス / 化学パルプ / 酸素 / シリカ / メトキシル基 / オゾン / パルプ
【研究成果の概要】
イナワラのアルカリ蒸解(脱リグニン)反応は、通常の木材に比べ著しく反応条件が温和な第1フェーズと、通常の木材と同程度の条件による第2フェーズに分けることができる。弱アルカリ(亜硫酸ソーダ)を用いた酸素アルカリ脱リグニンにより、シリカの脱離を抑制しつつ、効率よく脱リグニンを進めることができる。しかし、亜硫酸ソーダ酸素脱リグニン法を木材の脱リグニンに適用したところ、ほとんど効果がない。オゾン分解法等によるリグニン構造分析の結果、クラーソン法によってリグニンとして定量される物質のうち、80%含水エタノールあるいは希アルカリ水溶液によって容易に抽出される区分のほうがむしろ、木材リグニンに近い構造を有していることが明らかになった。このことから、イネや葉等の木質化していない植物細胞壁には、リグニンは存在するものの、細胞をお互いに結び付けている要素としての貢献は少なく、むしろ、他の物質が木材細胞におけるリグニンの役割を担っているのではないか、と推定された。亜硫酸ソーダ酸素蒸解法は、このような細胞壁構造に対応したパルプ化法であると考えられた。
弱アルカリを用いた酸素脱リグニン法における多糖類の崩壊機構について詳細に検討した。亜硫酸ソーダ酸素脱リグニン法によって極めて高収率でイネワラのパルプ化が進行するのは、この条件では、多糖類の低分子化反応がほとんど進行しないためであることが分かった。
イナワラの利用を阻害する主要因であるシリカついての知見を得るため、化学的・生化学的手法、光学的手法の両面から詳細に検討した。このうち、光学的手法によってイネ細胞壁内面におけるシリカの分布状態およびその形態について極めて詳細な知見を得ることができた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
新谷 博幸 (新谷 博行) | 東京大学 | 大学院・農学生命科学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
種田 英孝 | 日本製紙 | 研究開発本部 | 技術調査役(研究職/">(Kakenデータベース) |
飯塚 堯介 (飯塚 尭介) | 東京大学 | 大学院・農学生命科学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2001 - 2003
【配分額】11,400千円 (直接経費: 11,400千円)