東日本大震災及び原発事故後の福島県沿岸生態系の変化に関する実態と機構の解明
【研究キーワード】
潮間帯 / 無脊椎動物 / 底棲魚介類 / 個体数密度 / 性成熟 / 通年成熟 / 東日本大震災 / 福島原発事故
【研究成果の概要】
福島第一原子力発電所(1F)近傍等で潮間帯生物相とイボニシの分布及び産卵を調べた。1F近傍と対照地点で毎月イボニシを採集し、性成熟を組織学的に評価した。大熊町夫沢の標本で通年成熟現象がみられた。大熊町夫沢のイボニシ飼育実験、ベリジャー幼生に対する重金属の急性毒性試験、イボニシに対する核種と化学物質の曝露実験を実施した。浜通りのイボニシの非致死性突然変異を調べた。
福島県沿岸で試験底曳き調査とエビ類等幼生調査を行い、底棲魚介類(魚類、甲殻類、軟体類及び棘皮類)の総個体数密度が減少傾向にあり、クルマエビ上科の幼生密度がきわめて低いことを示した。代表種の生殖腺組織検査と胃内容物解析等も進めた。
【研究の社会的意義】
東日本大震災と福島原発事故の後、1F近傍で潮間帯の無脊椎動物の種数とイボニシの個体数密度の減少がみられ、それらの回復に4~5年を要した。加えて、1Fの南側に位置する大熊町のイボニシに通年成熟現象が観察された。いずれも奇異な現象である。今後、それぞれの現象を引き起こした要因とメカニズムの究明が必要である。
また、東日本大震災・福島原発事故後の福島県沿岸で底棲魚介類の群集構造に変化が認められた。震災・原発事故以降、福島県沿岸では複数の底棲魚介類の種で繁殖・再生産が阻害されている可能性が高まった。福島県沿岸における底棲魚介類の減少要因あるいは増殖阻害要因の究明を図り、必要な対策を講じる必要がある。
【研究代表者】