パレオフォレストリーに基づく日本海地域のスギの成立および変遷要因の解明
【研究分野】森林科学
【研究キーワード】
スギ / 日本海北部地域 / 花粉分析 / DNA分析 / 分布適域モデル / 歴史史料解析 / 林相図 / 磁化分析 / 日本海地域 / GIS / 磁気分析 / スギ林変遷
【研究成果の概要】
北陸地方から東北地方北部に分布するスギ林を対象に、花粉、磁化、DNA、歴史史料およびGISを用いた分析を組み合わせて、過去のスギ林の拡大および縮小に及ぼした気候変動と人間活動の影響を総合的に明らかにした。その結果、過去1万年前以前では氷期における寒冷化によってスギの集団サイズは減少したことが明らかになった。過去1万年間では、東北地方および北陸地方の各地に残存していたスギの小集団が温暖化によって徐々に増加し、約2500年前頃から急速に拡大した。また、秋田県北部地域では、木材利用増加のため室町時代以降よりスギは減少し、鉱業衰退後の植林により明治時代以降にスギが増加したことが示された。
【研究の社会的意義】
過去1万年前以前の寒冷化によりスギの集団サイズが減少したこと、残存したスギの小集団が温暖化により徐々に増加し、約2500年前以降に急激に拡大したこと、および室町時代以降の木材利用増加に伴いスギが減少し、明治時代以降の植林活動の活発化によりスギが増加したことなど、複数の自然科学的および社会科学的手法を組み合わせることによって過去長期間のスギの動態を明らかにすることができた。これらは学術的に貴重な発見であり、将来の気候変動に対するスギの分布予測に活用することができる。また、本研究において提唱したパレオフォレストリー研究の有効性を示すことができたと考えている。
【研究代表者】