ササ群落の蒸発散が森林衰退に与える影響
【研究分野】森林科学
【研究キーワード】
大台ヶ原 / ミヤコザサ / 蒸発散 / フェノロジー / 葉面積指数 / 森林衰退 / 生態系修復・整備 / 水資源 / 水収支 / 植物水分生理
【研究成果の概要】
研究代表者は一年間、当該研究課題に従事した。実施期間中にはササ群落の蒸発散量を観測するための基盤を確立することが目標であった。まず、調査地においてすでに稼働している気象計の維持に力を入れた。また、観測機器の停止によるデータ欠損を補うしくみを構築した。このため、気象計をもう一台設置し、同時に観測を行った。さらに、雨量の観測を確実にするために、一般に公開されている雨量データを利用する体制を整えた。この公開データは、調査対象地の正木峠(標高1683 m)から北に460 m離れた日出ヶ岳山頂(標高1695m)において国土交通省が観測している。
次に、データを効率的に演算処理する体制を整えた。調査地で回収したデータは適切に演算することで気象データとして利用可能になる。これまで表計算ソフトを利用してデータ処理を行ってきたが、データが蓄積するとともに処理に長い時間と手間がかかるようになっていた。そこで、プログラム言語Rを用いて、迅速かつ正確にデータを処理できるプログラムを作成した。
一方、研究代表者はミヤコザサ葉群の変化を定量することにも取り組んだ。調査地の林床に一面に広がるササ葉群は、一年間の中で葉の量が増減し、また葉の色も大きく変化する。このようなミヤコザサの生物季節(フェノロジー)に関する現象は、葉群からの蒸発散量の季節変化に強く関係すると考えられる。しかし、これまで何らかの指標を用いて、葉量の増減を定量した例はなかった。そこで、土地面積あたりの合計葉面積(葉面積指数)を連続して観測するシステムを構築した。定置式の葉面積指数センサーをササ葉群下の3カ所に設置し、気象観測と併せてデータを記録した。また、研究分担者はセンサー近傍のミヤコザサの桿に印を付け、葉が開く時期と生長、クロロフィル濃度を記録した。この観察は100本以上の桿について、生育期間を通じて継続的に行った。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
木佐貫 博光 | 三重大学 | 生物資源学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
熊谷 朝臣 | 東京大学 | 大学院農学生命科学研究科(農学部) | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2016-04-01 - 2017-03-31
【配分額】4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)