病虫害による大量枯死が森林生態系のCO2放出におよぼす影響の解明
【研究分野】森林科学
【研究キーワード】
コナラ / ナラ枯れ / 枯死木 / 分解 / 菌類 / 白色腐朽 / 褐色腐朽 / 枯死木分解 / リグニン / 褐色腐朽菌 / モニタリング / 二酸化炭素放出 / 菌類群集 / 長期モニタリング
【研究成果の概要】
本邦においてブナ化樹木の大量枯死をもたらしている「ブナ化樹木萎凋病」(通称「ナラ枯れ」)がコナラ枯死木の菌類群集と分解過程に与える影響を明らかにするために、全国7カ所の森林にコナラの丸太を設置してモニタリングを行った。丸太設置時の丸太内部の菌類群集をITS領域のメンタバーコーディングにより調べたところ、ナラ枯れの起こっている森林では菌類の種多様性と気温や降水量に関係性は見られなかったが、ナラ枯れの起こっている森林では、気温や降水量が大きい調査地ほど菌類の種多様性が高くなっていた。研究期間全体で5年分のデータ・サンプルを蓄積することができた。
【研究の社会的意義】
樹木の大量枯死は、森林からの二酸化炭素放出量を増やし、森林を炭素のシンクからソースへと変えてしまうと考えられている。しかし、大量枯死は森林の環境も激変させるため、枯死木の分解やそれに関わる菌類群集の機能にも影響を与える可能性がある。本研究により、ナラ枯れで枯死したコナラの丸太には、人間が伐倒した丸太とは有意に異なる菌類群集が発達することが明らかになった。分解のモニタリングを継続し、菌類の分解機能との関係を詳細に調べていくことにより、ナラ枯れが森林の炭素貯留に与える影響をより正確に評価することができる。
【研究代表者】