樹木における心材形成様式の種特性の解明と心材腐朽菌類の感染経路の特定
【研究キーワード】
木部 / 心材形成 / 落葉広葉樹 / 柔細胞 / 水輸送 / 心材腐朽 / 木材腐朽菌
【研究成果の概要】
樹木の樹幹における心材形成様式の種特性を明らかにするために、早期に心材形成する2樹種(タラノキ・ヌルデ)を含む落葉広葉樹4種(ミズナラ・ヤマザクラ)の苗木を国内3地域(北海道足寄町、埼玉県秩父市、静岡県浜松市)に植栽し、種毎の成長特性と心材の有無をそれぞれ評価した。
その結果、2021年(植栽2年目)の5月ではいずれの樹種も着色心材が認められず、足寄町に植栽したタラノキとヌルデは胴枯れを引き起こした。一方、9月になると浜松と秩父に植栽されたタラノキは初めて着色された心材が確認された。しかし、他の樹種は心材の形成が確認できなかった。タラノキの心材に関して、浜松の個体が秩父の個体よりも着色域はより広範囲に広がっていた。また、胴枯れを起こしていた足寄のタラノキとヌルデは、萌芽成長が認められ、生存が確認された。
酢酸カーミン溶液およびヨウ素液を用いて、タラノキの辺材と心材の木部柔細胞をそれぞれ観察した。その結果、地際の着色域の木部ではデンプンも核も認められない柔細胞であったが、地際から離れた上部の着色された木部ではデンプンと核を含む細胞が認められた。
これらの結果から、タラノキは数年で心材形成を起こすことが明らかになり、温暖な地域ほど心材形成が早いと考えられた。タラノキの心材に関して、木部の着色と柔細胞死は、地際ではほぼ同義であると考えられた。一方、地際から離れたところでは、着色域にも生きている細胞が確認された。9月に木部の着色が認められた理由として、旧年輪の木部のデンプンが成長のために使用されたことが挙げられ、おそらく地際付近の木部のデンプンから積極的に利用されたと考えられた。
【研究代表者】