高精度全球土壌水分分布の再解析と降水予測へのインパクト数値実験
【研究分野】広領域
【研究キーワード】
土壌水分 / グローバルデータセット / 中長期予報 / 大気陸面相互作用 / 世界水資源 / 気候モデル / 降水予測 / 陸面モデル
【研究成果の概要】
数週間以上の時間スケールを持つ地球大気環境の変動は、その下部境界条件である海洋の海面水温や陸上の土壌水分や積雪の影響を強く受けていることが明らかにされつつあり、それに密接に関わっているグローバルな土壌水分情報を知る重要性が高まってきた。そこで、観測外力を与え続けて、時間積分することによって全地球陸面の土壌水分を推定するという国際共同研究プロジェクト(Global Soil Wetness Project ; GSWP)が数年前に行なわれた。
そこで本研究ではその応用及び発展として、次のような研究を行なった。まず、GSWPや人工衛星データによって得られたグローバルな土壌水分分布を大気大循環モデルの初期値あるいは境界条件として与えて季節降水予測に関する数値実験を行い、気候値やfree runの場合に比べて降水予測精度がさらにどの程度向上するかを明らかにした。その結果、降雨シミュレーションの改善のためには、表層だけでなく深層までの土壌水分のプロファイルまたは全土壌水分量が必要であることが示唆され、その変換アルゴリズムの開発に成功した。また変換アルゴリズムを用いた季節降水予測結果を検証した結果、一部陸上において予測精度が向上し得ることを確認した。
また、GSWPへの入力としての全球降水量分布を補正した。特に高緯度における降雪補足率は一般に補正が必要であると認識されているが、個別の計測に対する各種手法を収集整理し、それを基に全球データへ適用可能なアルゴリズムを開発することによって、補正を実施した。その結果として水収支が一部改善され得ることが示唆された。
同時にグローバルな土壌水分情報や、そのシミュレーションの過程で算定されるグローバルな水文量は、まさに今世紀における人類生存の鍵の一つである水資源の算定に他ならないことが認識されるに至り、GSWPにより算定された地表面流出量とそれより計算される河川流出量を用いて、水資源研究を行なった。その結果、黄河・インダス・アメリカ西部など現在社会的水問題が顕在化しつつある地域の水危機が、グローバルデータセットおよびシミュレーション結果から地球上の地理的分布として導出可能であることを明らかにした。
【研究代表者】