中枢機能を利用した哺乳動物の病体制御に関する研究
【研究分野】基礎獣医学・基礎畜産学
【研究キーワード】
視床下部 / 摂食行動 / 代謝 / 糖尿病 / 肥満 / 成長ホルモン / レプチン / 形質転換動物
【研究成果の概要】
本研究の主要な目的は,視床下部による代謝と摂食の制御機構の神経機序を追究することで,肥満,糖尿病,摂食異常などの病態を制御するとともに,脂肪蓄積や体成長を中枢性に制御する方法論の基礎を確立することである.このために,我々が既に作出しているヒト成長ホルモン遺伝子導入形質転換ラットに加えて,新たにヒト成長ホルモン受容体遺伝子,ならびに摂食・代謝制御に関わる遺伝子として同定されたobese(ob)遺伝子を導入した形質転換ラットを作出し,これら三者,あるいは三者間の子孫を代謝疾患モデル動物として確立させることを試みた.ヒト成長ホルモン遺伝子を発現する形質転換ラットでは,視床下部におけるソマトスタチンニューロンの活動が亢進し,成長ホルモンのパルス状分泌が抑制され,高度の肥満を呈することが明らかとなった.一方,ヒト成長ホルモンおよびヒト成長ホルモン受容体をもつバイジェニックラットでは,脂肪重量,血中レブチン濃度の減少が認められた.すなわち,肝臓に成長ホルモン受容体が過剰に発現することにより,脂肪重量が低下することが明らかとなった.一方,視床下部による摂食の制御については,アンチセンスDNAを効率に細胞内に取り込ませるHVJリポソーム法によりGABA合成酵素(GAD)アイソザイム遺伝子を視床下部により投与し,GAD65が摂食の制御に深く関わっていることを明らかにした.これらの結果より,成長ホルモンのパルスパターンを変化させたり,GAD65などの遺伝子の発現を制御することにより,肥満,糖尿病,摂食異常などの病態を制御することができることが考えられた.
【研究代表者】