海洋無脊椎動物からの抗トロンビンリード化合物の探索
【研究分野】水産化学
【研究キーワード】
海洋無脊椎動物 / トロンビン / 海綿 / 酸素阻害 / 構造解析 / 立体化学 / ペプチド / スペクトル / 酵素阻害
【研究成果の概要】
伊豆半島,伊豆諸島,九州沿岸,および南西諸島などで採集した海洋無脊椎動物サンプル計342検体(海綿239,腔腸78,原索18,および外肛7検体)について,動物試料20gをアルコールおよびアセトンで抽出し,水とクロロフォルムで二層分配して,水溶性および脂溶性画分を調製した.それぞれの画分について,トロンビンに対する阻害活性スクリーニングを行ったところ,海綿46,腔腸12,原索4,および外肛動物1検体に活性を認めた.
つぎに,活性の認められた八丈島産海綿Theonella swinhoeiから活性物質の単離を試み,6つの新規活性物質pseudotheonamideA_1,A_2,B_2,C,D,およびdihydrocyclotheonamideAを得た.すなわち海綿サンプルをエタノールで抽出し濃縮後,水とエーテルで二層分配した.水層をさらにブタノールで抽出し,得られたブタノール層を減圧濃縮し,ゲルろ過,ODSフラッシュクロマトグラフィーで順次分画し,最終的に逆相のHPLCを用いて活性物質を精製した.これらの化合物の構造は,MS,NMRなどのスペクトル解析,アミノ酸分析,および化学変換により,絶対立体化学も含めて決定することができた.
得られた活性物質はトロンビンに対してIC_<50>0.91〜3.0μMで阻害活性を示した.これらの活性は類縁化合物cyclotheonamideAと比べると1/50以下と弱く,k-Argの構造が活性発現に重要であることを裏付けることができた.
また,中之島産海綿Theonella aff.mirabilisからトロンビン阻害物質を単離中,cathepsinBに対して阻害活性を示すペプチドtokaramideAをあわせて単離・構造決定した.TokaramideAはcathepsinBに対してIC_<50>29ng/mLの阻害活性を示した.
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1998 - 1999
【配分額】2,000千円 (直接経費: 2,000千円)