グローバル生産ネットワークと産業集積
【研究分野】経済政策
【研究キーワード】
グローバル・バリュー・チェーン / ネットワーク / 産業集積 / 国際貿易 / 貿易政策 / グラビティー・モデル / GVC / サプライ・チェーン / 中間材貿易 / マッチング / 貿易費用 / 知識スピルオーバー / 機械学習
【研究成果の概要】
地政学的緊張が高まる今日、グローバル生産ネットワークの再構築と重要産業の地域的集積は非常に重要な問題である。本研究では、いくつかの関連テーマについて重要な研究成果を上げてきた。
まずは、グローバル・バリュー・チェーン(GVC)の諸問題を研究する定量分析ツールを確立したことである。その分析ツールは既存の定量分析を応用したものではあるが、中間財貿易と最終財貿易とで貿易コストが異なることを許したり、財の生産技術向上にその生産性の向上だけでなく、クオリティーの向上も組み込むことができるようにしたりと、GVC分析により適したものとなっている。その分析ツールを使用し、新興国の経済成長が世界各国に与えた影響を解明したり、AIやロボットの労働市場への影響を検証したりした。AIやロボットの国際的影響を定量的に扱った研究はまだ緒についたばかりだが、貿易コスト減少の影響と比較し、現状ではその影響は微々たるものであることを明らかにするなど、この分野の進展に大きな貢献をした。
次に、GVC理論の基礎となる理論の開発や定量分析が挙げられる。その一つが国際寡占モデルへの輸送セクターの明示的導入であり、この分析により、産業保護的貿易政策の意図せざる影響が明らかになり、GVCへの政策効果の分析手法確立に貢献した。また、投入・産出関係を考慮した独占的競争の一般均衡モデルにより、市場の歪みによる厚生損失を計測した研究も進んだ。この定量分析により、生産ネットワークの存在が、市場の歪みによる厚生損失を5%から9%程度増幅させることがわかった。そしてその研究成果は、トップ5と呼ばれる国際専門誌の一つに掲載され、国際的に高く評価された。さらに、日本の産業クラスター政策の効果を検証した研究により、実際に行われた個別政策の評価も行われ、GVCの再構築に対する最適政策の研究に役立った。
【研究代表者】