中国語における文法的意味の史的変遷とその要因についての総合的研究
【研究キーワード】
言語学 / 中国語 / 歴史言語学 / 文法的意味 / 形式化 / 中国語文法 / 存在構文 / 時間詞 / 官話 / 介詞「把」 / 文法化 / 三人称代名詞「他」 / 矣 / アスペクト / 空間メタファー / 並列型複合動詞 / 歴史文法 / 受動構文 / イレギュラリティ / 個別化機能 / 疑問文末助詞 / 疑問詞 / 品詞性
【研究成果の概要】
2021年度はオンライン環境が整ったことを受け、共通課題に関する2度の定例研究会をオンラインで再開した他、各分担者は課題に関する以下の実績を上げた。
大西は中古に成立した「有」字時間的存在構文の形成プロセスの解明に取り組み、空間を主語とする「有」字空間的存在が上古後期に成立した後、文頭に立つのが通例であった時間フレーズが、空間へのメタファーによって主語と解釈しなおされたことによって成立し、両者の形成プロセスは異なるものであったことを明らかにした。
木村は昨年度に続き現代中国語における時間詞の語彙化の問題に取り組み、「1時、2時」などの時刻が〈量〉として捉られること、〈朝・昼・夜〉などの生活時間帯が〈空間〉的に捉えられることなど諸々の言語事実を掘り起こし、中国語話者が時間および時刻という概念を優れて具象的に捉えているという認知論的事実を明らかにした。
木津は、論文「「把」字句から見る長崎唐通事資料」にて、長崎唐通事資料は、共通中国語の介詞「給」と近い働きを有する「把」の機能から、二類に大別し得ることを指摘した。また日本中国語学会招待講演「「官話」再考」では、明清期の官話が、口頭語としては文言的色彩をもっていたことを、文献分析を通して明らかにした。
松江は、上古の『孟子』と中古の『雑宝蔵経』を資料として、三人称代詞“他”の生成過程を論じ、上中古間に語彙的意味では漂白化、指示性では定用法の拡大、指示対象では有情物指示用法の増加がみられると指摘した。またこの変化は、話者が三人称指示の際に排斥的心理を表現しようとする欲求に促されたものだと主張した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
木村 英樹 | 東京大学 | 大学院人文社会系研究科(文学部) | 名誉教授 | (Kakenデータベース) |
木津 祐子 | 京都大学 | 文学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
松江 崇 | 京都大学 | 人間・環境学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2018-04-01 - 2023-03-31
【配分額】16,640千円 (直接経費: 12,800千円、間接経費: 3,840千円)