ファイトプラズマのマイクロアレイ解析系の開発-ホストスイッチング機構解明に向けて
【研究分野】植物病理学
【研究キーワード】
ファイトプラズマ / ポストゲノム / マイクロアレイ / 細胞内寄生
【研究成果の概要】
ファイトプラズマはヨコバイなどの昆虫により伝搬され、700種以上の植物に病気を引き起こす農業上重要な植物病原細菌であり、約40年前に世界に先駆け我が国で最初に発見された微生物である。我々は2004年にファイトプラズマのゲノムを解読し(Oshima et al., Nature Genetics, 2004)、ファイトプラズマが代謝関連遺伝子の多くを失い、代わりに代謝物質の多くを宿主に依存した生活を送る生物であることを明らかにした。ファイトプラズマはヨコバイなどの昆虫によって媒介されて感染を拡大させる。植物と昆虫という異なる2界の宿主への感染を成立させるメカニズムは非常に興味深いのみならず、ファイトプラズマの防除という観点からも重要である。これを解明する手法の1つは、ファイトプラズマのマイクロアレイ解析を行い、ホストスイッチングに伴う遺伝子変動を網羅的に解析することである。
ファイトプラズマのフイクロアレイ解析に向けて、昨年度はゲノムにコードされる遺伝子の選抜とPCR増幅を行いプローブ部付を決定したので、今年度はマイクロアレイの作製を行った。ファイトプラズマゲノムにコードされる全754 ORFのうち、重複遺伝子を除いた583 0RFをPCR増幅し、これを用いてマクロアレイのチップを試作し、解析を試みた。ハイブリダイズさせるRNAとして、ファイトプラズマ感染植物および感染昆虫より抽出したものを用いた。その結果、植物と昆虫宿主とで発現量が大きく変動している遺伝子が多数認められ、10倍以上の極端な発現量の差がある遺伝子も少数ながら認められた。このことは、ファイトプラズマが自身の遺伝子発現を変化させることにより、異なる生物界の宿主に適応していることを改めて強く示唆している。
このマクロアレイの結果を検証するために、リアルタイムPCRを用いたRNAの定量的解析を試みた。植物および昆虫宿主内において発現量が大きく異なっているファイトプラズマ遺伝子を4つ選び、これについてリアルタイムPCR用のプライマーを設計し、マクロアレイにおいてハイブリダイスさせたものと同じRNAをテンプレートとして用い、リアルタイムPCRを行った。その結果、すべてについてマクロアレイの結果と同一の結果が得られたことから、マクロアレイによる結果の正当性が確認された。
【研究代表者】
【研究種目】萌芽研究
【研究期間】2007 - 2008
【配分額】3,400千円 (直接経費: 3,400千円)