共生糸状菌による根圏細菌叢との協調的な植物生長促進およびその寄生性抑制機構
【研究キーワード】
病原性抑制 / 植物生長促進 / 貧栄養 / Colletotrichum / シロイヌナズナ / 植物保護 / 共生菌 / 病原菌 / 揮発性物質 / 微生物叢 / 遺伝子発現 / 窒素枯渇 / リン枯渇 / マイクロバイオーム / 共生糸状菌 / 植物栄養 / 栄養枯渇 / アブラナ科植物 / 圃場
【研究成果の概要】
本研究では、共生糸状菌Colletotrichum tofieldiae (Ct)とCtが感染した根から単離された細菌集団が貧栄養環境で相加的に発揮する植物生長促進機構の理解をCtによる細菌群の潜在的な寄生性の抑止の観点に着目して目指している。
10種類の細菌の中の一種のPseudomonas属の細菌は単独接種の際に植物の成長を著しく阻害することを見いだし、種々の試験を組み合わせることでその植物生長促進阻害効果は細菌と根が直接相互作用することなく発揮されることを発見した。直接相互作用せずとも植物生長阻害効果が認められたことから、細菌が産生する何らかの揮発性物質が植物生長阻害の要因であることが示唆された。 一方で、共生糸状菌Ctと共接種した際には本Pseudomonas属の細菌による植物生長阻害効果は認められなくなるだけでなく、植物生長が促された。
Ctと細菌群による協調的な植物生長促進が認められる際に、本Pseudomonas属の細菌が発揮する病原性がどのように抑制されているかを探索する目的で、Ctと10種類中8種類の細菌群が感染したシロイヌナズナの根からRNAを抽出して、RNAseq解析に供し、シロイヌナズナおよびCtの遺伝子発現変動のデータを取得した。初期の解析から、シロイヌナズナの遺伝子の発現はCtや細菌群の単独接種と比べて、細菌群とCtとの混合接種時に質的に変化することを見いだした。さらに、16Sの細菌叢解析の結果を踏まえ、8種類中さらに2種類に細菌(Pseudomonas属菌は含まない)を絞り込んだ試験区も同時に解析したところ、シロイヌナズナはCtとの共接種時に8種類の場合とほぼ同等の遺伝子発現変動パターンと成長を示した。したがって、Ctと細菌群による相加的な植物生長促進効果はCtと2種類の細菌によって発揮されていることが示唆された。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)