ニホンウナギの産卵と回遊に影響を及ぼす海洋変動現象に関する研究
【研究分野】水産学一般
【研究キーワード】
ニホンウナギ / 卵・稚仔輸送 / 北赤道海流 / 塩分フロント / エルニーニョ / 南方振動指数 / 大西洋ウナギ / 北大西洋振動指数 / 水温フロント / 地衡流速 / 適水温 / シミュレーション / 回遊
【研究成果の概要】
本研究の目的は、ニホンウナギ資源と海洋変動現象の係わりに焦点を絞り、ニホンウナギの産卵場が位置する北赤道海流と幼生を日本沿岸に輸送する黒潮の物理的な環境特性と、それらの経年的な変動がウナギ幼生の輸送拡散過程に果たす役割を検討し、ニホンウナギ資源に与える海洋変動現象の影響を定量的に解明することにあった。そのために、北赤道海流域における既往の海洋観測データと日本沿岸でのシラスウナギ採捕統計資料の解析を行う一方、北太平洋における流れの大循環モデルを用いたウナギ幼生の輸送拡散に関する数値シミュレーションを行い、今までに整理されてこなかった東アジアにおけるニホンウナギの分布に係わる諸問題の解決を試みた。その結果、過去における産卵場の誤推定や韓国における資源量の低水準、台湾でのシラスの採捕位置といった東アジアでの分布に関わるいくつかの疑問は、北赤道海流から黒潮流域における幼生の輸送・拡散で説明できることが分かった。また、エルニーニョ発生時には、産卵場が位置する北赤道海流域における塩分フロントが大きく南に移動することから、それに伴う産卵場の南下や幼生の輸送速度の低下、無効分散の増大が日本沿岸でのシラス資源の減少をもたらす可能性が高いことが分かった。さらには、大西洋ウナギの産卵環境とも比較研究を行い、結論として、生息海域が異なっても、産卵の目印となる塩分フロントや水温フロントの数十年スケールの長期変動が、ニホンウナギ、アメリカウナギ、ヨーロッパウナギ近縁三種の資源量変動を規定している可能性があることを示した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】1999 - 2001
【配分額】3,400千円 (直接経費: 3,400千円)