ファイトプラズマの動植物ホストスイッチングメカニズム
【研究分野】植物保護
【研究キーワード】
小環状DNA / 全ゲノム解読 / 昆虫伝搬決定因子 / ATP合成酵素ヨコバイ / ホストスイッチング / ATP合成酵素 / ヨコバイ / ミュータント / 昆虫非伝搬性変異株 / 特異抗体 / 遺伝子発現
【研究成果の概要】
本年度は,ゲノム解読をさらに進め,ホストスイッチングに関与すると思われる遺伝子の発現ベクターを構築し、植物に発現させ,これにOY-NIMを感染させ,昆虫伝搬能が復帰するかどうか,個々の発現植物について調べる予定であった.しかし,当初の計画を覆し,ゲノム解読が急速に進み,全ゲノム解読に世界で初めて成功し,その結果,これまでの計画以上に研究が大きく進展することが期待されることとなった.全構造解析の結果,ファイトプラズマゲノムは,DNA複製や転写,翻訳に必要な基本的遺伝子が認められた一方で,アミノ酸合成系,脂肪酸合成系,TCA回路,酸化的リン酸化に関与する遺伝子を欠いていた.これはマイコプラズマ同様,代謝に必要な物質の多くを宿主細胞に依存していることを示すものと思われる.しかし,ペントースリン酸回路やPTS, ATP合成酵素に関する遺伝子も欠いており,自律増殖する生物において,最少遺伝子を待つとされるマイコプラズマより代謝関連遺伝子が少なかった.これはファイトプラズマがマイコプラズマと異なり,細池内寄生で栄養豊富な植物篩部に生息するため,退行的進化により遺伝子の多くを失ったのであろう.逆に,ファイトプラズマゲノムには,マイコプラズマには無い膜輸送系遺伝子が多数コードされていた.生物の「最少ゲノム」については,これまで数多く,の研究があるが,ファイトプラズマゲノムはエネルギー合成系をも欠き,栄養豊富な環境に適応した,新しいタイプの「最少ゲノム」であり,生物は生活する環境によって想像以上に多様な遺伝子構成で生きてゆけることを示唆している.今後昆虫伝搬能決定因子の解明が急速に進むことが期待される.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
石川 幸男 | 東京大学 | 大学院・農学生命科学研究科 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
佐藤 守 | 独立行政法人農業生物資源研究所 | 主席研究管理官 |
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【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2001 - 2003
【配分額】37,700千円 (直接経費: 29,000千円、間接経費: 8,700千円)