粗放管理時代における河川堤防の合理的な植生管理・生態緑化手法の開発
【研究キーワード】
生態系サービス / 植生復元 / リモートセンシング / UAV / 大規模実証試験
【研究成果の概要】
河川堤防は国土保全上重要な施設であるが,維持管理予算の縮減に伴い従来の植生管理を維持することが困難となっている。堤防植生では治水機能の優れた草種が求められ,近年では生物多様性保全への配慮も重要な考慮事項となった。中茎在来草本のチガヤは,治水機能,群落内の植物種多様性ともに高く,省管理時代における目標植生の一つとされる。
河川堤防では治水機能向上のため各地で堤防の拡幅が計画・実施されている。本研究では,拡幅工事のない既存堤防では,治水機能の低い植生をチガヤが優占する治水・保全機能の高い植生へ誘導する植生管理手法,また,しばしば外来種の優占化を招く堤防拡幅工事に際しても,同様のチガヤ植生へ誘導できる生態緑化手法を開発する。一方,UAVや衛星画像というリモートセンシング技術を用いて,人の踏査なしに,省力的に堤防における主要な植生タイプの面的分布を広範囲で把握する。これら植生図(どこで)と植生管理手法(どのように管理するか)に関する知見から管理計画案を策定する。さらに,この計画案を実際に大面積で試行し,得られた計画案の実現可能性を作業面から検証する。
当該年度は,複数年を要する野外試験を継続実施し,遺伝的多様性の試験を継続するとともに,これまでに本研究にて解明された事項,すなわち刈取り以外に雑草植生の形成や維持に影響を及ぼす要因のうち,土壌化学性と種間相互作用という2点をとりまとめ,総説紹介した。また,UAV LiDARデータを用いて,単子葉植物群落と双子葉植物群落の識別技術を開発し,その制度検証を行った結果,その識別制度は83%であることを報告した。
【研究代表者】