イネ科植物の適応戦略としての多様性,その生態的意義と遺伝的制御
【研究分野】作物学
【研究キーワード】
イネ / トウモロコシ / コムギ / 根系 / 節間伸長 / 分枝根 / 品種間差異 / 微小管
【研究成果の概要】
1.生態的特性や遺伝的背景が異なる水稲品種を水田で栽培し、根系形態の品種間差異を検討した結果、単位面積当たりの総根量と、その垂直分布における重心位置を示す「深さ指数」の組合せが品種によって異なり、根量は節根数と分枝根を含めた「平均根長」によって、分布様式は節根の平均走向角と「平均根長」によって、それぞれ規定されることが解明できた。植物体の構成単位であるファイトマーに着目して解析した結果、生育に伴うファイトマー数の増加と、個々のファイトマーの大きさの増加における差異を通じて茎葉部の形態が異なるのに伴い、根系形態の品種間差異も形成されることが分かった。個々のファイトマーにおける節根の形成位置や数も根系形態の品種間差異に深く係わるため、遺伝学的な解析も行なった。根系形態の環境反応を検討するために、陸稲品種を異なる土壌水分条件下で栽培したところ、根系を構成する種々の要素によって環境反応が異なった。
2.トウモロコシの茎の生長を蛍光抗体法を用いて微小管の動態に着目して検討した結果、伸長節間では最初に分化する髄状分裂組織が介在分裂組織に変化することが分かった。一方、不伸長節間ではこれらの分裂組織が分化せず、生長様式が全く異なっていた。茎の伸長様式と最終形態は、髄状分裂組織の分化とその活性持続期間に規定されることが解明できた。また、茎の生育に関する遺伝学的解析を突然変異体を利用して行なった。
3.圃場における生育前期のコムギの表層根ではとくに種子根と発達した側根の比率が高いこと、生育後半になると、順次出現する節根の割合が増加することが分かった。異なる土壌水分条件で栽培して様々な形態や分枝程度を持つ根系を作り、その後充分な灌水を行なったところ、葉面積に対応した吸水能力が発揮された。しかし、厳しい乾燥条件を経験した場合には充分な吸水能力を回復できない場合もあった。
【研究代表者】