環境権・環境政策の新しい動向に関する理論的・実践的・比較法的研究
【研究分野】公法学
【研究キーワード】
環境権 / 環境政策 / 憲法 / 人間の尊厳 / 国家 / 自然 / 科学・技術 / 国家目標 / 科学技術 / ドイツ憲法
【研究成果の概要】
平成10年4月の日独シンポジウム(於東京)にむけての共同研究、シンポジウムそれ自体及び本年9月の日独シンポジウム(於フライブルク)にむけての共同研究を通じて以下の事が確認された。科学・技術の進歩が必然的にもたらした、人間の生存基盤としての環境の大規模な破壊の危機に直面して、第一に、ドイツでは環境保護を国家に義務づける国家目標規定の基本法への導入により、日本では生存権或いは幸福追求権、或いは両者の複合を根拠とする環境権の提唱により憲法レベルでの対応が行われ、第二に、いずれの国においても、これらの憲法規定を具体化する大量の法律・命令の制定とこれらの法律・命令に依拠する行政・裁判の展開により憲法以下のレベルでの対応が行われて来ている。しかし、環境問題との取組みのためには、事後的且つ個別的救済ではなくて予防的で且つ包括的・全般的な解決策が必要である点、また、現在の世代のための配慮という視点のみならず将来の世代のための現在の世代の責務という視点が必要である点、また、法律や行政の専門家だけでは対応不可能であって科学や技術の専門家の協力が不可欠であるという点、更に、個別国家だけの対応だけでなく、国境を接している国々の共同対応、更にはグローバルな対応が必要であるという点において、従来の憲法システムを超えるシステムの構築が必要となる。即ち、一方で、国家権力を命令・強制によって国民の権利を侵害するものと想定したうえでそれをコントロールするところに憲法の本質を見出すのではなくて、国家を国民の基本的生存利益のために必要な施策を講ずる事へと積極的に命令し、義務づける法規範システムとして捉え直し、他方で、この積極的な義務の実現のための協同作業に国家機関、専門家集団、関心を有する団体・個人を組入れる手続・過程を確保する法規範システムとして捉えることが必要となる。
【研究代表者】