明治初期の制度・政策・市場-近世〜近代移行期における経済発展の基盤-
【研究分野】日本史
【研究キーワード】
明治初期 / 井上財政 / 工部省 / 鉱山業 / 石油業 / 廻米問屋 / 製紙業 / 製鉄業 / 鉱山 / お雇外国人 / 財政政策 / 洋紙製造業 / 鉱業 / 米穀市場 / 機械制大工業 / 財政金融政策 / 民間工業奨励 / 製鉄所 / 輸送業者 / 産米改良 / 鉄砲市場 / 地方財政 / 産業改良 / 鉄鋼業
【研究成果の概要】
本研究は企業勃興に先立つ明治初期を対象とし、19世紀末に産業革命が達成された前提と基盤を、制度・政策・市場の形成に注目して探ることを課題とする。本課題に総合的に接近をはかるため、各領域を研究分担者が受け持ち、研究代表者が全体を総括する共同研究を組織した。実証的に研究を進めるため資料調査に力点を置いて多様な資料を収集して研究を進めた。その結果、まず第1に制度の整備や経済政策の展開について、(1)井上財政を準備金運用の面から大隈財政と比較して、両財政政策を対照的に把握し、(2)工部省勧工寮設置から農商務省工務局発足に至る時期の民間工業奨励政策を系統的に跡付け、(3)工部省時代の鉱山官営政策における御雇い外国人の決定的役割と阿仁鉱山等への投資の経緯を明らかにし、(4)御雇い外国人の調査を前提とした官営石油事業の経験が民間石油業の勃興に活かされたことを解明した。第2に市場形成について、大豆生田が維新変革による領主米流通め消滅を背景として、資金力・信用力により「遠国米」を大量取引する深川廻米問屋の台頭・組織化とその限界を指摘した。第3にこれ等の諸条件の形成により当該時期に活発化した諸産業の動向について検討し、(1)民間の機械制大工業として創業期の洋紙製造業が、華族・政商・外商による出資、大蔵省・大阪府による融資・一時的株式所有などの諸条件により定着したこと、(2)官営製鉄所建設に先立つ海軍省所管製鉄所案の検討から、前史となる三菱の民間製鉄所建設案の挫折と官営案の浮上、その目的が軍事のみにしぼられなかったこと、(3)府県段階の勧農政策と地域豪農の関係を追いって、豪農が府県の政策に呼応して土地改良・肥料導入に積極的に取り組んだことを明らかにした。なお、本研究の成果は、さらに数名の研究者の協力を仰いでより体系的に再構成し、論文集として刊行することを予定している。
【研究代表者】