イネ乳酸脱水素酵素およびアルコール脱水素酵素遺伝子の嫌気ストレス下の発現
【研究分野】育種学
【研究キーワード】
アルコール脱水素酵素 / 乳酸脱水素酵素 / 嫌気ストレス / ADH / LDH / 耐湿性 / 解糖系 / 遺伝子発現 / 嫌気条件 / 冠水耐性 / 発酵
【研究成果の概要】
嫌気条件下では、ピルビン酸を基質として、最終的にエタノールに至るエタノール発酵と、乳酸に至る乳酸発酵との2つの経路が働く。イネを用いて発酵の最終段階に働くアルコール脱水素酵素(ADH)と乳酸脱水素酵素(LDH)の遺伝子発現について解析した。
1.ADHについて
ADH欠失突然変異体の解糖系における生理的から、ADH活性の低下による補酵素NADの低下に起因するフルクトース1,6二リン酸の蓄積が見られた。(2)ADH欠失突然変異体においてADH活性は、根に局在していた。また、アイソザイムとしてADH2のホモダイマーのバンドだけが検出され、野生型で強く検出されるADH1のバンドが検出されなかった。(3)ノーザン解析によって、突然変異体においてもADH1遺伝子は正常に転写されていることがわかり、転写後の要因によって突然変異体のADH1活性が欠失する事が明らかになった。(4)突然変異体の冠水耐性は野生型と比較して劣ることがわかり、ADHはイネの冠水耐性に関して重要な役割を果たしていることが示唆された。
2.LDHについて
(1)LDH遺伝子をクローニングして全塩基配列を決定した。5'-RACE法により、LDH遺伝子の転写開始点は翻訳開始コドンから129塩基上流であることが分かった。ゲノミックサザン分析では、LDH遺伝子がシングルコピーであることが強く示唆され、動物やオオムギなどと異なることが分かった。(2)ノーザン解析の結果、嫌気処理後mRNAレベルは6時間後まで著しく増加し、その後は急速に減少、処理24時間後には処理前のレベルに戻った。過剰なLDH活性は乳酸の蓄積の結果pHを急激に低下させ植物体に悪影響を及ぼすので、イネLDH発現がtransientであることはイネの持つ耐湿性と関連のある可能性があると考えられた。(3)RFLPによる連鎖解析により、LDH遺伝子は第6染色体の末端にマッピングされ、その遺伝子座はLdhと命名された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
武田 元吉 | 玉川大学 | 農学部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1995 - 1997
【配分額】6,800千円 (直接経費: 6,800千円)