光合成生物に広く保存された栄養欠乏時の脂質転換制御とその応用の分子基盤
【研究キーワード】
スルホ脂質 / トリアシルグリセロール / リン欠乏時の脂質転換 / 藻類 / 植物
【研究成果の概要】
[クラミドモナスの脂質転換制御] 前年に引き続きLRL類似遺伝子であるLRLLaの変異株を詳細に解析した結果、LRL1変異株と同様に中性脂質の蓄積、増殖、細胞サイズに影響が出るが、細胞サイズはLRL1変異株と相反する表現型を示し、LRL1と関連して働く可能性が示された。また、クラミドモナスにおいて、葉緑体主要膜脂質MGDGのリサイクリングシステムを見出し、その異常は脂質転換など栄養欠乏応答に大きな影響があることを示して論文報告した。
[PGとSQDGの機能相補性] 昨年度見出したPGとSQDGの機能相補性を詳しく調べた結果、PG量の低下はクロロフィル合成に大きく影響すること、PGとSQDGを同時に欠損するとさらに影響が大きくなることが分かった。このことからPGがクロロフィルの効率的な合成に決定的に重要であることが明らかとなった。
[脂質転換の進化と多様性] 車軸藻類クレブソルミディウムにおいて、リン欠乏時に蓄積するGlcADGは、葉緑体脂質SQDGを合成する酵素SQD2のバリアントによって葉緑体外で合成されることを示した。また昨年度ユーグレナで見出したリン欠乏時に蓄積する脂質についてLC-MS/MSを用いて構造予測し、スフィンゴ脂質の一種であることを見出した。また藻類の重金属ストレスはリンや窒素欠乏と同様に脂質蓄積を引き起こすことから重金属耐性についても解析を行った。調べた重金属のうち、銅と亜ヒ酸は光合成生育を阻害するが、光合成活性には影響を及ぼさないことがわかった。さらに昨年度までに整備した藻類LRLのシロイヌナズナホモログAtMYB44,56,70,77,109の遺伝子破壊株について、表現型の解析を行った。その結果、AtMYB56破壊株だけがリン欠乏時の根の長さが短くなることを見出し、AtMYB56がリン欠乏応答に関わる転写因子であることが強く示唆された。
【研究代表者】