製紙用パルプの酸素脱リグニン過程における炭水化物の分解抑制技術の開発
【研究分野】林産科学・木質工学
【研究キーワード】
酸素 / 脱リグニン / 活性酸素種 / パルプ / 炭水化物 / フェノール / 流量計
【研究成果の概要】
本年度においては、kraft lignin、単量体フェノール性リグニンモデル化合物guaiacol、vanillyl alcohol、単量体非フェノール性リグニンモデル化合物veratryl alcohol、および、二量体リグニンモデル化合物guaiacylglycerol-β-guaiacylether(GG)を酸素脱リグニン過程条件下で処理し、これらの化合物の酸素消費量を酸素流量計によって測定することにより、それぞれの化合物の酸化進行度について分析を行った。非フェノール性とフェノール性両ユニットを含むkraft ligninとGGの1ユニットあたりの酸素消費量が、単量体のguaiacol、vanillyl alcoholと同程度であること、および、非フェノール性のveratryl alcoholは、酸素をほとんど消費しないことから、kraft ligninとGGの非フェノール性ユニットは、処理中にフェノール性ユニットに変換されることによって、元来のフェノール性ユニットと同程度に酸化されることが示唆された。非フェノール性リグニンユニットは、従来から酸素脱リグニン過程で酸化が進行しないと考えられていたため、この結果は本過程における反応を理解する上で、非常に重要な知見である。
また、α-位にカルボニル基を持つ芳香核のフェノール性水酸基と側鎖のβ-位でエーテル結合を形成する二量体モデル化合物guaiacylglycerol-β-phenacyl ether(GP)は、アルカリに対して非常に不安定で、容易に新たなフェノール性ユニットを遊離すること、また、酸素が存在することにより、GGのような通常のモデル化合物の酸化ではほとんど得られないvanillilnが顕著な量検出されることが、判明した。これらの結果から、α-位へのカルボニル基の導入は、脱リグニン反応に対して、従来考えられているよりも大幅に効果的であることが示唆された。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(B)
【研究期間】2005 - 2007
【配分額】3,600千円 (直接経費: 3,600千円)