文学テクストにおける「都市」と「公共圏」
【研究分野】文学一般(含文学論・比較文学)・西洋古典
【研究キーワード】
都市 / 公共圏 / コミュニケーション / メディア / エディターシップ論 / テクスト論 / 文学 / 市民社会
【研究成果の概要】
本研究は、近代社会における「都市」と「公共圏」の関係を理論的に考察するとともに、その歴史的および具体的な現れ方を、近現代のアジア、アメリカ、ヨーロッパの文学テクストを主たる素材に検証することを目的とした。4年間の研究によって得られた知見は多岐に渡るが、主たるものを幾つかのテーマに分けて挙げておく。(1)「都市」と「公共圏」の原理的な関係性について。「異質なもの」相互の意味変換装置としての「都市」と「公共圏」の機能的同質性という当初の仮説は、理論的にも具体的にも確認することができた。この視点は、「情報」と「メディア」の集中化と現代「都市」の成立、「文芸的公共圏」の変容と「エディターシップ」のクローズアップ等の現象を理論的に解釈する際にも説得力をもつ。(2)文学等の具体的なテクストにおける「都市と公共圏」の成立と歴史的な推移の跡づけ。ヨーロッパ、アメリカ、アジアいずれにおいても社会的なコミュニケーションによる意味転換装置としての「都市と公共圏」のトポスは、明確に認められた(ミェンヘン、サンフランシスコ、北京、等)。(3)現代のメディア・情報社会における「都市と公共圏」再活性化の試み。「異質なるもの」を抽象的な「情報」に転換し、グローバルな「メディア」によって流通させる現代の社会的コミュニケーションに対抗する形で、具体的な空間に支えられた「公共圏」の再評価とその意識的な創設の試みも確認された。情報メディア化一辺倒とは異なる今後の「都市」の方向性として注目される。
【研究代表者】