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粘土質水田において、乾燥亀裂は圃場の排水性に大きな影響を及ぼしている。特に暗渠へ向かう水の流れは、数センチの亀裂の深度の違いに大きく左右されることが明らかとなっている。本研究は、このような亀裂の重要性を鑑み、土・水連成解析と破壊力学の知見を応用した水田における亀裂進展シミュレーションモデルの開発を目的とした。第一に、非線形破壊力学パラメーターの一つである亀裂先端開口角(CTOA)のサクション圧密履歴への依存性を解析した。破壊特性の評価法としては、3点曲`げで試験を適用し、亀裂先端を記録した画像から、画像解析によってCTOAを査定した。圧密サクションの増加に伴い、CTOAは減少すること、また、圧密後再飽和させた試料では、再飽和前よりCTOAはさらに小さくなることを明らかにした。次に、曲げ試験によって測定されるCTOAが、乾燥収縮によって生じる亀裂のCTOAと等価かどうかを検証するため、モデル土層を用いてサクションの負荷による亀裂の進展を観察した。その結果、曲げ試験とサクションにより収縮の間にCTOAの著しい違いは認められなかった。そこで、CTOAをサクションに依存する亀裂進展の支配パラメータと位置づけ、亀裂進展シミュレーションモデルを構築した。プログラムは、非線形弾性を構成式とした土・水連成解析プログラムを中心として、亀裂先端の開口変位(CTOA)により亀裂進展の有無を各ステップ毎に判定し、CTOAが限界値を超えたときに、亀裂先端部の接点の拘束を解放することで亀裂の進展を表現するものである。3点曲げ試験によって実測したCTOAの値を用いてシミュレーションを行うと、亀裂先端部の有効応力や間隙水圧は妥当な範囲に収まった。また、このシミュレーションモデルにほ場で実測したパラメータや諸条件を入力すると、実測した亀裂の深度におおよそ一致する結果が得られた。

【研究分担者】
足立一日出	独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構	中央農業総合研究センター田畑輪換研究チーム	上席研究員	(Kakenデータベース)