精原細胞の自己複製と分化のバランスを制御するヒストン修飾の役割
【研究分野】実験動物学
【研究キーワード】
精子形成 / 精原細胞 / エピジェネティクス / ヒストン / 制限幹細胞 / 精巣 / 精原幹細胞 / 発生・分化 / 細胞・組織
【研究成果の概要】
ヒストン脱メチル化酵素であるFbxl11の精子形成における機能を明らかにすることを目的として、生殖細胞特異的Fbxl11ノックアウト(Fbxl11 cKO)マウスを作成し解析を行った。その結果、Fbxl11cKOマウスでは、精原細胞の自己複製には大きな影響は見られない一方で、精原細胞の分化が著しく抑制され不妊になることが明らかになった。さらに、Fbxl11 cKOマウスの精原細胞では、mTORC活性の低下が起こり分化が抑制されていることが明らかになった。以上の結果から、Fbxl11はmTORシグナルを介して精原細胞の分化を調節するという新規のモデルが提唱された。
【研究の社会的意義】
生殖細胞は次世代に遺伝情報を伝達しうる唯一の細胞系譜であり、その発生を制御する分子基盤を明らかにすることは基礎科学的に極めて興味深い分野であると同時に、不妊・不育が大きな問題となっている今日において社会的にも希求性の高い研究である。本研究では、ヒストン脱メチル化酵素Fbxl11がmTORシグナルを介して精原細胞の分化を調節することを明らかにしており、エピジェネティクス制御を介した精原細胞のホメオスタシス維持機構を理解する上で重要な知見となる。さらに、本研究の成果は新たな不妊治療技術を開発するための一助となることも期待できる。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2017-04-01 - 2021-03-31
【配分額】4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)