中枢神経系における神経細胞社会の構築機構
【研究分野】神経化学・神経薬理学
【研究キーワード】
大脳皮質 / 神経細胞移動 / 脳室下帯 / 辺縁帯 / 脳室帯 / 遺伝子発現 / 多極性移動 / 発生・分化 / 神経細胞 / 細胞移動 / 子宮内胎児脳電気穿孔法 / 樹状突起 / 中間帯 / 電気穿孔法 / 層形成 / 皮質板 / 大脳皮質発生 / ジーンチップ
【研究成果の概要】
発生中の大脳皮質において、脳室帯で誕生した神経細胞は、その多くが移動開始後に多極性移動細胞に変化し、その後中間帯で再度ロコモーション細胞に変化してから皮質板に入ることを、スライス培養下のみならずin vivoにおいても見いだした。その後は、辺縁帯直下へと移動した後、誕生時期をほぼ共通にする細胞同士が集合して、脳表面に平行な6層からなる多層構造(皮質板)を形成する。移動を終えつつある細胞は辺縁帯直下で約24時間の長きにわたって停滞し、先導突起を変化させて著明な樹状突起を分化成熟させること、同時期に誕生した神経細胞同士が凝集して層構造を形成していくこと等、様々な現象を一斉に示すことを見いだした。そこで、移動過程における細胞挙動制御に特に着目し、それに関わる遺伝子群の候補を各部位において網羅的に検索した。その結果、脳室帯については時期依存的に発現を変動させる遺伝子約4,000個(うち分泌シグナルまたは膜貫通領域を有する分子が659個)を同定し、発現プロファイルにより9様式に分類した。脳室下帯と中間帯については約20遺伝子、辺縁帯直下については約40遺伝子を同定した。以上により、各部位で共通の発現変動を示す分子群が予想外に多いことを見いだした。それらのうちいくつかの分子の機能解析を本研究では行ったが、それに加え、それらの転写の増減が独立して制御され偶然同調するとは考えにくいため、今後は、これら多くの遺伝子がほぼ同調して発現を変動させるメカニズムを明らかにしていきたい。
【研究代表者】