光活性化型チャンネルを用いたグリア-ニューロン間情報伝達の生理的役割の解明
【研究分野】神経科学一般
【研究キーワード】
脳・神経 / チャンネルロドプシン / Na_xチャンネル / グリア細胞 / 光活性化
【研究成果の概要】
Na_xチャンネルは脳弓下器官において、脱水に伴う細胞外液中のNa^+レベルの上昇を感知するNa^+レベルセンサーとして機能し、脱水時の塩分摂取回避行動の制御に関与している。申請者らは以前の研究において、グリア細胞に発現するNa_xがC末端領域を介してNa^+/K^+-ATPaseと結合していること、Na_xの開口によってNa^+が流入するとNa^+/K^+-ATPaseを活性化し、それに伴って解糖系が活性化すること、その結果グリア細胞からの乳酸放出が亢進し、この乳酸がGABAニューロンの神経活動レベルを上昇させることを明らかにした。本研究では、まず培養細胞に光活性化型チャンネル(ChR2)にNa_xのC末端領域を結合した融合タンパク質を発現させ、光照射によってChR2を開口させることによって、Na^+/K^+-ATPaseを活性化することを試みた。その結果、予想通り光によって解糖系の活性化が起きることが明らかとなった。Na_xのC末端領域を結合していないChR2ではこの解糖系の活性化は起きず、この機構が働くには、Na_xのC末端領域を介したChR2とNa^+/K^+-ATPaseの結合が重要であることが確認された。次に、この融合タンパク質をマウスの脳弓下器官のグリア細胞に発現させ、急性脳スライスにおける電気生理学的解析を行ったところ、光照射によってGABAニューロンの神経活動レベルが上昇することが確認された。このように、光制御によってChR2を開口することによって人為的にグリア細胞の糖代謝を活性化し、これによってin vivoと同様に特定の神経細胞活動を制御できることが明らかとなった。従って、本研究の結果は、申請者らが開発した光照射装置を用いて自由行動中の動物の脳内局所領域に光を照射すれば、脱水時の塩分摂取回避行動を光により制御できることを示唆している。グリア細胞の個体行動制御における役割の解明につながるものと期待される。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的萌芽研究
【研究期間】2010
【配分額】3,100千円 (直接経費: 3,100千円)