成体脳における神経細胞移動の免疫組織化学及び分子生物学的解析
【研究分野】生理学一般
【研究キーワード】
ドレブリン / 神経発生 / 細胞移動 / 細胞骨格 / アクチン / アクチン結合蛋白 / シナプス / 可塑性 / 成熟脳 / N-CAM / 嗅球 / ラット / ラディアルグリア
【研究成果の概要】
平成4年度の研究により決定された神経細胞移動に直接関係すると考えられる蛋白すなわちドレブリン、L1、GFAP、ビメンチンに対する抗体を用いて免疫蛍光抗体法により、成後脳を系統的に解析した。生後6週、8週、10週のラットを麻酔後経心的に還流固定し、脳を取りだし常法により厚さ16μmの連続凍結切片を作成した。免疫組織化学はFITCあるいはローダミンにより標識された二次抗体を用いて間接蛍光抗体法により行った。その結果側脳室上衣細胞直下を臭球に向かって移動している細胞が確認できた。またドレブリン及びL1以外の蛋白でGFAPと共在するヴィメンチンが細胞移動にとって重要であることが示唆された。次にこのドレブリンが細胞内で細胞骨格とどのように相互作用をしているかを生化学的に明らかにした。その結果ドレブリンはトロポミオシンと競合的にアクチンファイバーと結合していることが明らかになった。次にこの競合が細胞内でも起きているかを確かめるために、線維芽細胞をドレブリンcDNA導入により、形質転換して、細胞内でのドレブリンとトロポミオシンとの競合を明らかにした。またラミニン塗布カバーグラス上での小脳顆粒細胞の培養を行い、細胞移動の定量的解析を行える系を作成した。この系を用いて、燐酸化酵素阻害剤(とくに受容体型チロシン燐酸化酵素の比較的特異的な阻害剤と考えられているK252a)が細胞移動を特異的に阻害し、その際ドレブリンがアクチンファイバーより解離することを示した。
【研究代表者】