神経組織の発生と再生における細胞接着蛋白の機能の研究
【研究分野】神経化学・神経薬理学
【研究キーワード】
細胞接着タンパク質 / 神経発生 / 神経再生 / L1 / 神経回路形成 / ミエリンタンパク質 / モノクローナル抗体 / 大脳新皮質 / 大脳皮質 / 神経細胞 / サブプレートニューロン / 系統発生 / 接着タンパク質 / 欠損マウス / 細胞接着蛋白 / ヘルペスウイルスベクター / 単クローン抗体
【研究成果の概要】
研究目的:細胞接着タンパク質などの活性タンパク質の構造と機能の解析を行い、それらの神経発生および病態時の神経再生における役割を解明する。
研究結果:1)細胞接着蛋白L1の研究:A)神経回路形成におけるL1の役割:胎生のラットの視床皮質路はL1に陽性であり、この経路の形成にPax6が必要であることを示した。L1欠損マウスを用いた解析の結果、L1は視床と大脳皮質の線維連絡の形成に重要であることが示された。皮質脊髄路線維は、L1陽性、TAG1陰性であったが、脳梁および海馬の交連線維にはL1とTAG1の両方の発現がみられことより、正中線を横断する線維の形成におけるL1とTAG1の役割を考察した。B)L1cDNAを変異ヘルペスウイルスベクターに組込み、外因性のL1発現系を確立した。脊髄損傷モデル動物の損傷部位に作成したベクターに組込んだL1cDNAを発現させ、再生促進効果の検討を行った。
II)末梢神経のミエリンタンパク質の研究:PASII/PMP22タンパク質の糖鎖構造を解明し、HNK1エピトープを含むことを示した。PASII/PMP22タンパク質の強制発現系を確立し、機能解析を行った結果、細胞増殖と神経突起の伸長の抑制効果を示したが、細胞接着活性は認められたかった。
III)モノクローナル抗体を用いた研究:新しいモノクローナル抗体K1を作成し、解析を行った結果、この抗体は、大脳新皮質で最初期に分化するサブプレートニューロンの表面の高分子膜タンパク質と特異的に反応し、後に陽性反応はマージナルゾーンのニューロンとのシナプス結合部位に局在した。系統発生的検索の結果、K1抗原は哺乳類の新皮質の進化的研究に、有用なマーカーとなりうることが示された。
【研究代表者】