小脳をモデルにin vivoで解き明かす、神経回路形成のシナプスを介した制御機構
【研究分野】神経生理学・神経科学一般
【研究キーワード】
神経細胞 / 樹状突起 / 発達 / 神経活動 / 小脳 / プルキンエ細胞 / 登上線維 / 平行線維 / 神経科学
【研究成果の概要】
脳の神経細胞が回路を形成するメカニズムを理解するため、本研究では、生きたマウスの小脳プルキンエ細胞を使って、神経細胞樹状突起が形成される過程を2光子顕微鏡を使って観察することに成功した。その結果、樹状突起が完成する前には多くの不要な樹状突起が退縮することが明らかになった。さらに、この樹状突起退縮過程には神経活動と、NMDA型グルタミン酸受容体およびCaMK2キナーゼ蛋白質が、必要であることも見出した。NMDA型グルタミン酸受容体は脳のあらゆるシナプスで多くの機能を果たすことが知られている。本研究は回路形成において神経活動やシナプス伝達が必要であることを示唆する。
【研究の社会的意義】
神経細胞はシナプスによって神経回路内で情報を伝達する。神経回路は神経細胞の軸索と樹状突起がシナプス結合することで形成される。多くの神経細胞は胎児期から生後の早い時期にかけて神経回路を形成するが、回路形成中においてシナプスを介した情報伝達がどんな役割を持つのは不明であった。本研究ではマウスの小脳プルキンエ細胞を使って、成熟したシナプスにおいて脳機能に非常に大切であることが知られる、NMDA型グルタミン酸受容体が、発達中の樹状突起の形成に必要であることを発見した。この発見は、発達中のシナプスによる相互作用が回路形成を促すことを示す、脳の発達機構において重要な知見である。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2016-04-01 - 2019-03-31
【配分額】4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)