自己組織的マイクロニューロチップ
【研究分野】知能機械学・機械システム
【研究キーワード】
脳 / 神経 / 培養神経細胞 / カルシウムイメージング / 自己組織化 / 微小電極アレイ / アモルファスシリコン
【研究成果の概要】
脳のモデルとして,自己組織的に形される培神経細胞の神経回が注目されている.従来の研究では,培養神経細胞活動を計測・刺激するために,多点電極アレイ(Multi-electrode array, MEA)が広く用いられてきた.しかし,MEAでは,電気刺激を与えられる範囲が電極上のみに制限されるため,刺激可能な面積や分解能に限界がある.この欠点を解消するための基盤技術として,光照射で刺激部位を任意の大きさ・形状に選択できる光アドレス電極を開発した.
本電極は,酸化スズ透明金属膜,水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)光導電性膜,アンチモン酸亜鉛分散エポキシ保護膜の3層から成る.光が電極に照射されるとa-Si:H膜の電気伝導率が上昇し,仮想的な電極が生成される.A-Si:H膜は,膜厚が150nm,暗導電率と明導電率がそれぞれ4x10^<-11>,3x10-5Ω-1cm^<-1>であり,CVD(Chemical Vopor Deposition)を用いて成膜される.保護膜は,スピンコートで成膜できる防水性保護膜で,弱アルカリ性の培養液によるa-Si:Hの劣化を防ぐ.同膜はアンチモン酸亜鉛を電荷担体とした10MΩ/sq.程度の表面抵抗を有する低導電性薄膜であり,膜厚方向にのみ電流を通す.
試作した電極の耐久性を培養液への暴露実験で評価したところ,誘電性及び導電性保護膜共に,2週間以上の培養液への暴露に耐え,その間,光感度はほぼ一定に保たれた.本電極上で神経細胞を培養し,光照射下で電気刺激を与えたところ,誘電性及び導電性保護膜を介した全面刺激双方で,神経細胞内のCa2+濃度の変化を誘発できた.さらに,導電性保護膜を介して局所刺激を与えると,光照射部位の神経細胞を選択的に刺激できた.これらの結果から,試作電極は,神経科学の構成論的研究の強力なツールとして期待できる.
【研究代表者】