周産期化学物質曝露による脳機能障害の発症機序の解明と障害の予防・抑制法の開発
【研究キーワード】
環境化学物質 / 脳発達 / エピジェネティクス / メタボローム / miRNA / エピゲノム
【研究成果の概要】
本研究の目的は、周産期化学物質曝露により引き起こされる成長後の脳機能異常の発生メカニズムの解明である。目的達成に向け、本年度は①周産期化学物質曝露による成長後の異常を引き起こす素因の解明、②成長後の脳機能異常につながる素因の発生時期と保持、それに伴う遺伝子・タンパク発現と表現型の変化への影響の検証の2目標に関する研究を行った。
①について、これまでに周産期甲状腺機能低下症マウスから明らかとなっている発達・発育期(離乳時)の脳(小脳)のエピゲノム変化を見出していることから、成長後(9~10週齢)のエピゲノム状態について解析を行った。その結果、離乳時のエピゲノム変化が維持されていることを確認した。一方、発達に伴って変化したと考えられるエピゲノム変化も検出された。また、遺伝子発現変化とエピゲノム変化の関連について、特に発現調節に関わるプロモーター領域のメチル化に着目して解析した結果、メチル化の変化によって発現が変化する小脳発達関連遺伝子候補が抽出された。現在、DNAメチル化阻害剤を用いて、上記の異常なエピゲノム変化を抑制できるかを検証している。
②については、miRNAを中心に解析を行った。これまでの網羅解析から明らかとなっている個々のmiRNAの発現について確認したところ、一部のmiRNAの発現が変化していることを確認した。合わせて、各miRNA群と小脳組織のマイクロアレイ解析の結果と比較したところ、小脳発達に関連する遺伝子を抑制しうるmiRNA候補が明らかとなった。現在、特定のmiRNAの機能を抑制するmiRNA Inhibitorの検討を進めている。
【研究代表者】