演算結果としてタンパク質を出力する自律型生体高分子コンピュータの構築
【研究分野】生体生命情報学
【研究キーワード】
DNAコンピュータ / タンパク質 / 無細胞翻訳系 / 構成的生物学 / 細胞機能の再構築 / 細胞機能の再構成
【研究成果の概要】
生体高分子システム研究の構成的アプローチの一環である本研究の目的は、あらかじめ指定したRNAを入力とし、分子演算の途中過程で入力とは全く異なる配列のRNAを生成して、これを鋳型とする翻訳反応を行い、最終結果としてタンパク質を出力する自律型生体高分子コンピュータを創出することにある。この生体高分子コンピュータは、逆転写酵素および転写酵素の活性に依存することから、RTRACSと呼ばれ、また人工的につくられた遺伝子回路としてみなすこともできる。
本研究以前のRTRACSは50℃で反応を至適化されていたが、これは一般的な無細胞翻訳反応よりも高い温度である。そこで、本研究により、37℃で反応が進行するようにRTRACSの条件を再調整した。また、系の構成要素が雑多である無細胞翻訳系では、核酸の分解が頻繁に生じてしまう。そこで、本研究では、RTRACSの変換規則を記したDNA分子の末端を修飾することで、分解酵素に対する耐性を付与した。興味深いことに、この修飾により、これまでのRTRACSに見られていた非特異的な交差反応を大幅に低減することができた。これは、予期しない核酸のミスハイブリダイゼーションに起因するDNA伸長反応が修飾により不可能であるためだと予想できる。これらの改善により、RTRACSの出力RNAを鋳型として汎用されている無細胞翻訳反応を行うことに、なんら障害が無いことが示された。
また、本研究の成果を構成的生物学の世界水準の諸研究と共に議論するために、構成的生物学に関する国際ワークショップ、「synthetic approaches to cellular functions」を海外研究者と共にオーガナイズし、この会には150名以上が参加した。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(B)
【研究期間】2005 - 2006
【配分額】3,100千円 (直接経費: 3,100千円)