脳内に抗体医薬を効率的に送達するスマートベシクルの創製
【研究キーワード】
抗体医薬 / 脳 / 血液脳関門 / アルツハイマー病 / 薬剤送達システム / スマートベシクル / 高分子
【研究成果の概要】
脳は血管内皮細胞間の結合が極めて強固なために、血管内腔から脳実質部への物質輸送が著しく制限されている(血液脳関門: BBB)。そのために、アルツハイマー病(AD)等の脳神経系(CNS)疾患の治療に十分量の薬剤を、全身投与によって脳実質部に送達し、機能させられない事が大きな課題となっている。すなわち、「BBBを越えて、抗体等の高分子医薬を高効率で脳実質部に送達して機能させる方法論を創出できるか?」という「問い」はまさにCNS疾患の抜本的治療が実現できるかどうかの核心であり、これまでにも世界各国の研究グループによって様々なアプローチが検討されてきたものの、未だ達成されていない挑戦的な研究課題である。この課題を解決するために本研究では、BBBを突破して脳実質部に浸透し、さらには脳内環境に応答して抗体医薬を放出することで機能を発現させるウイルス・サイズの薬剤送達システム(DDS)を、生体適合性に優れた高分子材料の自己組織化に基づいて構築し、CNS疾患の革新的治療法を確立することを目的とする。
当該年度は前年度までに確立した抗体を内水相に搭載したスマートベシクル (IgG@SV)を用いて、① SV表層のグルコースリガンドのGLUT1認識能の評価と② 脳内環境を模倣した還元環境におけるIgG@SVからのIgGの放出について検討を行なった。特に②については、次年度に計画しているin vivo実験の前準備として(ex vivo)、ADマウスの脳を用いてよりin vivoの条件に近いAβが沈着した培養脳切片を作成し、放出されたIgGの標的指向性を評価した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)