聴性脳幹反応による意識障害・脳死の診断と内耳・神経病理学的研究
【研究分野】医用生体工学・生体材料学
【研究キーワード】
ABR / 脳死 / 脳幹死 / 意識障害 / 赤血球 / 全脊麻 / ヘモグロビン / 血流遮断 / 側頭骨病理 / 蝸牛神経核 / 神経病理 / 脳血管障害 / 無酸素状態
【研究成果の概要】
聴性脳幹反応(ABR)は1970年に米国のJewettによって発見されて以来、意識障害や脳死の判定の補助診断法として、NICUやICUにおいて欠くことの出来ない地位を確立している。クリック音に対する蝸牛、聴神経、脳幹の聴覚中継核より出現する7つの波は、意識障害では、波の数が減少したり、潜時が延長したりし、脳死では第I波のみ出現するが無反応の場合は側頭骨病理では、その多くはコルチ器が融解状態であるが例外的に、良く保たれている。しかし、神経病理では脳幹内の血管の赤血球はゴ-スト化し、ヘモグロビンが失われている。ところが髄外を走る脳底動脈およびその分枝内の赤血球はほぼ正常である。これは、脳死状態では脳幹内の血流が途絶しているが、脳底動脈には血流が存在することを示している。コルチ器が融解している例では、前下小脳動脈の枝の迷路動脈の血行障害が生じている。(2)脳死状態では大脳皮質、海馬、小脳皮質の神経細胞の著明な脱落が認められる。脳幹では蝸牛神経核でも同様な現象が認められるが、他の聴覚中継核の保存状態は良い。ラットの脳死実験では、(1)両側の頚動脈結紮による大脳血流遮断モデルでは、ABRは6〜12時間経てもほとんど影響がない。大脳皮質のニューロンは海馬を除き良く保たれている。(2)脳底動脈結紮モデルでは、ABRは直ちにI波だけとなり、その後、無反応となる。(3)クモ膜下にキシロカインを注入する全脊麻モデルでは、ABRは数分で無反応になるが、しかしその後、徐々に回復し正常波形になった。他にネコおけるABRの各波の起源を脳幹全体からの電場電位、破壊実験、HRP注入実験より明らかにすることが出来た。
【研究代表者】