18世紀以降の英語圏文学等における「注意」「共感」と「言語運用能力」表象の研究
【研究キーワード】
言語運用能力 / 英文学 / 日本文学 / 事務 / 共感 / 他者性 / 形式 / 聞く / 英語 / 日本語 / 文学 / 言語運用 / コミュニケーション
【研究成果の概要】
本研究の中心となるのは、19世紀から20世紀へ、さらに21世紀へと時代が進むにつれて、言語をめぐる規範意識はどう変化したかということである。その要因は何だったのか、またメディア装置の発達とも何らかの関係があるのかといったことにも目を向ける。言語運用能力に焦点をしぼりつつ文学作品を検分することで、あらたな知見が得られるものと考えている。
令和3年度は自由間接話法といった観点を利用したり、事務文書との比較を行ったりしながら、英米文学および日本文学の作品の中でどのように言語運用能力が扱われてきたか、調査をすすめた。とくに注目したのは、情報共有を目指す中でどのように言語運用能力に注意が払われたかである。20世紀には媒体としての言語そのものに関心が向けられるようになったが、その方法は必ずしも一様ではない。
そのあたりの事情を明らかにするために「形式」「注意」「時間」「情報共有」「権力」「負の要素」「もの」という7つの観点を切り口に言語運用についての調査を進めた。前年度に引き続き、ここでも「聞く」という要素は大きな意味を持つのですでに得た「盗み聞き」や「漏れ聞こえ」についての知見は生かしつつ、より広く、視覚情報との結びつきなども考慮にいれた情報についての考察を行った。
成果物としては、単行本『病んだ言葉 癒やす言葉 生きる言葉』でこれまでの研究成果を公表することができたのが一番の収穫である。所収論文からいくつかの例をあげれば、「森鴎外と事務能力――『渋江抽斎』の物と言葉」「漱石の食事法――胃病の倫理を生きるということ」「「如是我聞」の妙な二人称をめぐって――太宰治の「心づくし」」「西脇順三郎の英文学度――抒情詩と「がっかりの構造」をめぐって」などになる。今回も文学作品とその他の領域の文書とを比較しながらこの問題を扱えたことは大きな成果だと考えている。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2025-03-31
【配分額】4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)