ヘモグロビン小胞体(ナノ粒子)の酸素放出過程解析と虚血部位酸素の機序解明
【研究分野】医用生体工学・生体材料学
【研究キーワード】
人工赤血球 / 微小循環動態 / ヘモグロビン / 虚血 / 酸素放出 / ヘモレオロジー / 人工血液 / リポソーム / レオロジー制御 / 輸血代替
【研究成果の概要】
低酸素状態の組織に対し、Hb小胞体(HbV)により効率的に酸素供給するための機序解明が目的である。Hl6年度はハムスターにHbVを投与し、顕微鏡下に細動脈血流を停止させ、血中HbVの酸素放出の特徴を検討した。高酸素親和度(P_<50>=8mmHg, HbV_8)の投与は、低酸素親和度(P_<50>=29mmHg, HbV_<29>)に比較して酸素分圧の低下を僅かに遅延させた。酸素分圧10mmHg以下では、赤血球とHbV_<29>の酸素飽和度は10%以下になるが、HbV_8は60%を維持し、より多くの酸素を保持しながら酸素を徐放した。従って、投与量が僅かでも、低酸素領域では赤血球上回る酸素供給源として作動する。
H17年度は、貧血状態におけるHbVの投与効果を検討した。アルブミン溶液で血液希釈をした後、HbV_8,HbV_<29>を投与した。HbV_8がHbV_<29>よりも組織酸素分圧が高く、血圧、心拍出量も高値を維持し、血流を増大させた。高酸素親和度HbV_8は必要部位にまで酸素を確実に運搬する、また血漿層に均一に分散し、酸素を均等に供給できる利点を有する。また、有茎皮弁モデルでの検討では、高酸素親和度HbV_8(P_<50>=9mmHg)をHES溶液に分散させて高粘度とし、血液交換を行った。HbVは血漿粘度を増大させ、血管壁の勢断応力を生じ、側副経路を経由した血行動態の改善、血管壁透過性充進の抑制、組織酸素分圧の回復、および壊死細胞数の低減が確認された。
血液粘度が虚血性領域の酸素化に重要なので、H18年度はHbVと各種代用血漿剤を組合わせ特徴ある粘弾性挙動を明らかにした。虚血領域の酸素化に重要な因子として酸素親和度の制御のみならず、レオロジー制御の可能性が明らかになった。Hb小胞体の物性値が容易に調節できるので、今後テーラーメード人工赤血球として様々な臨床応用が期待できる。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
小林 紘一 | 慶應義塾大学 | 医学部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2004 - 2006
【配分額】14,900千円 (直接経費: 14,900千円)