複数の単色X線を用いたカラーX線診断の基礎研究
【研究分野】医用生体工学・生体材料学
【研究キーワード】
単色X線 / X線診断 / 陽子ビーム / 陽子マイクロビーム / 加速器 / 造影撮影
【研究成果の概要】
単色X線を用いてカラーX線画像を得るための予備実験を行った。東京工業大学のタンデム加速器から得られる、エネルギーが3MeVの陽子ビームをPd, Ag, Cd, Inの標的に照射し、エネルギーが21.17〜24.21keVのK_αX線およびそれに付随する相対強度が約18%のK_βX線、すなわち擬似単色X線を発生させ、これらのX線を、マイラ幕を通して大気中に取り出した。X線の発生量およびエネルギーのモニターにはCdTe半導体検出器を用いた。上記のK_αX線のエネルギーが1keV間隔で離れていることに注目し、Ruの造影撮影を試みた。RuのKX線の吸収端が22.1keVにあるので、X線発生標的としてPd(K_αが21.17keV)とCd(K_αが23.17keV)を選んだ。アクリル製のブロックに孔をあけ、そこにRuを含む水を詰め、血管を模擬するファントムとした。比較用に水だけの孔、空気の孔もあけてある。X線画像の取得には歯科用のイメージングプレートを使用した。画素の読み取り分解能は50μm×50μmである。2種類のX線照射により得られた画像を水だけの部分が消えるように演算処理することにより、Ru水溶液と空気の部分を強調することに成功した。
15年11月には原子力研究所高崎研究所のバンデグラフ加速器施設のマシンタイムを得て、同様な実験を行った。2.6MeVの陽子ビームを用いてRu造影のファントム測定を行い、東京工業大学における実験よりもきれいな画像を得ることができた。更に、ビームスポットが10μm×10μmと非常に小さい陽子マイクロビームを用いて、X線画像の拡大撮影を試みた。資料は小魚(シラス)であり、厚さは約1mm、長さは約20mmである。シラスにはCa(K吸収端が4.04keV)が含まれることから、X線発生標的としてTi(K_αが4.05keV)とCu(K_αが8.04keV)を用意した。いずれのX線の場合にも位置分解能が約20mmのきれいな画像を得た。Ti-K_αの方が若干であるが、良いコントラストの画像であった。
【研究代表者】