3次元X線構造解析技術の開発-分子機能の高度化への対応-
【研究分野】機能・物性・材料
【研究キーワード】
X線構造解析 / 分子機能 / イメージングプレート / 三次元構造解析 / イメージングプレート方式 / X線吸収補正 / 極低温構造解析 / 高圧下構造解析 / 電子-プロトン運動 / プロトン移動
【研究成果の概要】
本研究の目的は、独自に開発したX線構造解析装置に搭載できる極低温クライオスタットの製作して、定量的な三次元構造解析ができる技術を確立し、分子機能の高度化にも十分耐えうる結晶構造解析の研究環境を向上させることにある。本装置で採用したイメージング-プレート方式がカウンター方式に替わる次世代のX線構造解析手法として注目されている.特に、水素結合を含む有機・無機ハイブリッド化合物などのように、重金属とプロトンのゆらぎが共存するような試料においても精密な情報を得られることを目標としていることから、高精度でかつ全温度領域で精度が変わらぬ装置の開発が必要とされる。そのために、試料自動追尾装置および内部ビームストッパー方式の導入を行った。その結果、全温度範囲におけるR因子の誤差は1%程度に抑えられており、目的に見合った装置の製作に成功した。さらに、構造解析から得られる複数の変化量を可視化するプログラム開発も行い、その物性の起源を探ることができる新しいシステムが完成している。このシステムを水素結合型の擬一次元電荷移動金属錯体;[Pt(H2-xEDAG)(HEDAG)]・TCNQ,(H2EDAG=エチレンジアミノグリオキシム)の単結晶に適応して、この装置の有効性を検証した。その結果、180K近傍より低温において超格子反射を見出し、ドナー間の水素結合を構成する酸素原子のみに温度因子の異常が観測していることを発見した。その酸素の異方性温度因子の温度変化から、中途半端なプロトンの占有度をもつ一次元の水素結合格子が長周期の秩序-無秩序転移を起こし、これが金属-絶縁体相転移の要因であることを導き出している。このような新しい実験事実が本研究で開発された装置で始めて得られたことは特筆される。
【研究代表者】