タイリングによるウイルス外殻のボトムアップ設計
【研究キーワード】
ウイルス外殻 / カプシド / タイリング / 準等価理論 / ドッキング / 分子シミュレーション
【研究成果の概要】
本研究はウイルス外殻の構造について、Casper and Klugの準等価理論による展開図を近似して正二十面体を作るアプローチとは対照的に、そもそも球面上を敷き詰めることのできる部品構造(コートタンパク構造)のパターンは何か?というタイリングの観点からウイルス外殻を調べ、外殻構造の構成とデザイン原理の理解を深化させることを目的とする。去年度は球面上のタイリングについて考察し、平面を埋め尽くすためのタイリング理論でわかっている部品構造の対象軸のうち6回対称軸を5回対称軸とみなすことで正二十面体のタイリングへと近似することを考案した。これを用いて準等価理論でT1に分類される外殻構造を観察したところ、外見上は4つの異なるタイリングへ分類できることがわかった。本年度は、去年度に主に外見だけで行ったT1外殻構造のタイリング分類を更に定量化するための研究を行った。まず一つ目に、外殻を構成するコートタンパク質モノマーの不斉炭素原子のデカルト座標を点群として発生させ、去年考案した正二十面体のタイリングを満たす平面を点群へフィッティングし分類するプログラムを開発した。実際に、T1外殻構造の一つのテストデータを定量的に分類できるようになった。二つ目として、剛体ドッキングプログラムを用いてコートタンパクのホモ二量体のドッキング計算を行い、得られたドッキングスコアとホモ二量体のスクリュー軸の関係を調べた。あるT1外殻構造では、スクリュー軸が3回対称軸と2回対称軸となるホモ二量体構造のスコアの成績が良かった一方で、別のT1外殻構造では5回対称軸と2回対称軸の成績が良かった。これは考案したタイリング分類の傾向と一致しており、タイリング分類が単なる見た目の分類だけでなく、構造の安定性とも関わっていることが示唆された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
舘 知宏 | 東京大学 | 大学院総合文化研究科 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
堀山 貴史 | 北海道大学 | 情報科学研究院 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2020-07-30 - 2023-03-31
【配分額】6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)