核スペックル異常症病態機構の解明:NKAP関連症候群をモデルとして
【研究キーワード】
核スペックル / RNA / 精神運動発達異常 / RNA結合タンパク / 転写制御 / 精神運動発達遅滞
【研究成果の概要】
NKAPタンパク機能を明らかにするために、免疫沈降質量解析を用いてNKAP結合タンパクを網羅的に同定した。NKAP結合タンパクとして多くのRNA結合タンパク、スプライス因子、RNAヘリカーゼを同定した。NKAP結合タンパクとしてSONやSRRM2といったスペックル構造因子を同定した。新規NKAP結合タンパクとしてRNA輸送に関わるTREX複合体構成因子, NXF1やXPO1を同定し、NKAPがRNA輸送制御に関わる可能性が示唆された。RNase処理を行ったサンプルでも免疫沈降質量解析を行い、これらNKAP結合タンパクはRNAを介した間接的な結合ではないことを確認している。タンパク質分解除去システムを応用したNKAP-AID細胞を用いて、NKAP除去によるNKAP結合タンパク細胞内分布への影響を調べたところ、多くのNKAP結合タンパクの細胞内分布異常を確認した。これら結果から、NKAPがNKAP結合タンパクの細胞内局在を制御することによりRNA代謝制御に関わっている可能性が示唆された。
さらにNKAP関連症候群と類似する症状を呈する新規精神運動発達異常症候群として、SRRM2遺伝子変異によるSRRM2関連症候群を同定した。臨床症状はNKAP関連症候群と同様に精神運動発達遅滞を主徴とし、筋緊張低下、注意欠陥多動性障害、成長障害等の合併を認めた。SRRM2はNKAP結合因子であり、NKAP除去によりSRRM2細胞内局在異常が引き起こされるため、NKAP変異とSRRM2変異が同様のRNA代謝異常を引き起こし、精神運動発達異常が引き起こされる可能性が示唆された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
白髭 克彦 | 東京大学 | 定量生命科学研究所 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)