時間情報を用いた3次元PET画像再構成手法の開発
【研究分野】医用生体工学・生体材料学
【研究キーワード】
Positoron Emission Tomography / PET / 動態機能計測 / 3次元計測 / SPECT
【研究成果の概要】
放射性同位元素(RI)で標識された物質を被験者に投与し、これら物質の代謝量を調べる動態機能計測は、生体の疾患などの発見に役立つとされている。このために、従来は3次元Positron Emission Tomography(PET)装置を用いて得られた投影データから時間フレームごとの核種分布画像を再構成し、最小二乗法等を用いて代謝量を表す画像を推定しているが、データ量が膨大なため、再構成に非常に大きな計算時間を要する。しかし、代謝機能診断には核種分布画像を必要とされないことから、本年度は、核種分布画像を求めずに観測データから直接代謝量画像を推定する高速な推定手法を開発することを目的とした。
^<18>F-FDGを用いた糖代謝機能の計測には,3コンパートメント(2-tissue3パラメータ)モデルが用いられる.このモデルを用いるとPETのj番目のディテクタにおける投影データg_j(T)は,ディテクタの感度分布関数h_j(r),FDGの速度パラメータをK1(r),k2(r),k3(r),FDGの血漿中のRI濃度をC_p(t)を用いて2重積分の形で表せる.また,糖代謝率は,速度パラメータの積K-Complex(=K_1(r)k_2(r)/{k_2(r)+k_3(r)})として表される.本手法では,投影データから直接K-Complexを推定する.具体的には,まず投影データg_j(T)からC_p(t)をデコンボリューションにより取り除く.次に3つの異なる時間T_1,T_2,T_3(T_3=2T_2=4T_1)の範囲で時間積分を行い,得られたデータに対し再構成にあたる演算を行い3つの画像を得る.最後にこの3つの画像からK-Complexを解析的に求める.本手法では,放射能分布画像を再構成しないため計算時間が削減され,更に時間積分により投影データのSNが向上する.
本手法の有効性を確認するために計算機シミュレーションを行った。まず,ノイズレベルと推定精度の関係を確認するため,デジタル脳ファントムを用いてシミュレーションを行った.想定したPETの観測フレーム及び時間は40フレーム,60分で,投影データにポアソンノイズを加えた.推定増の真値からのずれ,標準偏差を調べた結果から,ノイズと本手法による推定精度の関係は,非線型最小自乗法による結果とほぼ一致していることが分かった。このことから、画質を落とすことなく計算時間が10分の1以下になることを確認し、本手法の有効性を示した。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1998 - 1999
【配分額】2,100千円 (直接経費: 2,100千円)