閃光光分解と氷包埋低温電子顕微鏡による生体反応の時間分解三次元構造解析
【研究分野】生体物性学
【研究キーワード】
閃光光分解 / 氷包埋法 / 低温電子顕微鏡法 / caged物質 / 時間分解 / 三次元構造 / 蛋白質結晶 / 膜蛋白質 / 氷胞埋法 / 三次元構造解析 / 急速凍結法
【研究成果の概要】
本研究は、生体反応に伴う生体高分子の構造変化を分子レベルで可視化すべく、氷包埋低温電子顕微鏡法とcaged化合物の閃光光分解を組み合わせた、新しい技術を開発しようというものである。時間分解能を得るために、試料を閃光照射による反応開始から適当な時間で急速凍結し、ガラス状の氷に試料を包埋したまま、染色・固定無しに低温で観察する。そして、電子顕微鏡像から三次元構造を再構成する。この研究は代表者が英国で行った予備的研究に基づくものであり、閃光照射に伴う熱発生を如何にして抑えるかが、技術上最大の問題であった。Caged物質の閃光光分解は他の分野で既に使われているが、熱の問題は、電子顕微鏡法に応用する際、特に大きな問題となる。それは、試料が支持膜上の非常に薄い溶液(氷)の層であり、支持膜は光分解に使われる近紫外の光に対し不透明であるためである。本研究では、光源にネオディミウム・ヤグレーザ、caged物質としてcaged-ATPを用いた。パルス・レーザーは、単色の光源として優れているが、パルス幅が数ナノ秒と短く、支持膜からグリッドへの熱伝導が殆ど起こらないため、熱の問題は予想よりも遥かに深刻であった。しかし、支持膜に銀を採用することで入射光の大部分を反射し、入射光をグリッドと平行に近くなるまで低い角度で照射することによって、著しく低減できた。この結果、試料である膜蛋白結晶の規則構造を保ちつつ、10%以上の変換効率でcaged物質を閃光光分解することができた。本研究によって、生体反応を可視化する道が開けたといえよう。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
奥富 昭次 | 日本電子エンジニアリング | 機器開発部 | 部長取締役 |
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【研究種目】試験研究(B)
【研究期間】1991 - 1992
【配分額】8,400千円 (直接経費: 8,400千円)