組織内水のケミカルイメージングから迫る脳の生理学
【研究キーワード】
組織内水 / 脳 / ケミカルイメージング / 分子動態
【研究成果の概要】
脳の機能が溶質であるイオンや生理活性物質によって制御されていることはよく理解されているが、加えて、それらの溶質の共通の溶媒である脳組織内の水の量や状態によって脳機能が強く制御されているという概念が近年提唱されるようになった。しかし、脳は光を通し難く、また、水はラベルが困難なため、脳組織内における水の可視化解析は非常に困難であった。本研究はこれらの問題を、組織透過性が高い近赤外光を用い、分子の固有振動を捉えることで可視化するラマン散乱顕微鏡を適用することで乗り越え、脳内水動態の可視化解析を図るものである。
研究2年目の本年度は、昨年度導入を行ったSRS(stimulated Raman scattering)シグナル検出系を備えたマルチモダル多光子顕微鏡システムを用い、脳スライス内での水と溶質の挙動の解析を試みた。昨年度の研究から、このシステムを用いることにより、水をSRSで、溶質である色素と細胞形態を蛍光により同時に検出できることが明らかとなった。本年度は、ラマン散乱により区別できる重水と軽水の置換を行うことにより、脳組織内への水の拡散を捉え、脳内水動態の解析を進めた。ここから、脳組織内において水の動きを捉えることに成功し、溶質との違いを定量的に解析することができることが明らかとなった。今後はこの詳細の解析を進めるとともに、様々な条件下における水・溶質動態の制御に関する知見の獲得を試みる。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(開拓)
【研究期間】2020-07-30 - 2024-03-31
【配分額】26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)