原形質連絡においてウイルスの細胞間転移を促進する30Kタンパク質のリン酸化の解析
【研究分野】分子遺伝学・分子生理学
【研究キーワード】
タバコモザイクウイルス / 植物ウイルス / リン酸化 / 細胞間移行 / 原形質連絡 / 30kDタンパク質 / 宿主特異性
【研究成果の概要】
本研究でタバコモザイクウイルス(TMV)を材料にしてウイルスと植物の相互作用を原形質連絡との関連で解析を行っている。TMVに限らず植物ウイルスが細胞間の移行をする場は原形質連絡である。そして細胞間移行する過程にはこのウイルスがコードする30kD蛋白質が機能している。実際、30kD蛋白質は原形質連絡に局在すること、その前に細胞質で合成されて細胞質で形成する構造を免疫電子顕微鏡観察によって明らかとした。その中で移行タンパク質である30Kタンパク質が植物細胞内でリン酸化を受けている事実を見いだした。238番目のセリンはリン酸化を受けていることを確認した。残りのリン酸化を受けているアミノ酸も30kD蛋白質のアミノ酸残基234から261番目までに存在するセリン残基であることが確実である。このリン酸化と細胞質で形成する構造の形成と関係が示唆された。植物のある種のウイルス抵抗性応答を考える際にリン酸化酵素による影響を考慮することが重要であることを明らかとした。Tm-2^2遺伝子をもつトマトでも増殖可能となった2^2株の解析の結果、2^2株は30kD蛋白質の中にアミノ酸の置換変異2個があることにより、Tm-2^2トマトでも増殖可能となったことが明らかとなった。そのうちの一つが238番目のセリンが変化することが重要である。リン酸化とTm-2^2遺伝子によるウイルス抵抗性との関係が示唆された。並行して、大腸菌で発現させた30kD蛋白質を基質にして、無細胞系でのリン酸化活性の検索を行っている。通常の植物細胞の物質輸送、情報伝達が行われるこの原形質連絡に存在する蛋白質がリン酸化を受ける事実は通常の細胞の営みとの関連や、どのようなkinaseがこのリン酸化に関与しているのかなどを含めて興味が持たれる。
【研究代表者】
【研究種目】一般研究(C)
【研究期間】1992 - 1993
【配分額】1,800千円 (直接経費: 1,800千円)