生体膜直視用走査型トンネル顕微鏡(STM)の開発
【研究分野】分子遺伝学・分子生理学
【研究キーワード】
走査型トンネル顕微鏡 / 生細胞膜 / リポソ-ム膜 / フリ-ズフラクチャ-レプリカ / T24細胞 / CHO細胞 / STM / 光学顕微鏡 / 平行移動方式 / ATP分子 / チャネル分子 / フリーズ・フラクチャー・レプリカ / マウスの膀胱膜 / リポソーム
【研究成果の概要】
我々は始めに,マウス膀胱膜及びリポソ-ム膜に対する透過型電子顕微鏡(TEM)用フリ-ズ・フラクチャ-・レプリカを作製し、そのSTM像をTEM像と比較することによって、「生体膜直視用STM」の開発の戦略を検討した。マウス膀胱膜はTEM像で見る限り膜面上に規則性のより構造が確認されているので、この膜構造をSTMで観察できるのではないかという期待があった。しかしながら、我々が最初に用いた固体物性用STMでは、走査範囲の小ささ(100nm×100nm)並びに観察部位決定の困難さから、TEM像と比較できるようなSTM像を得ることが出来なかった。そこで、マウス膀胱膜上の規則構造に比べてはるかに大きいリポソ-ムに対するレプリカを作製し、これを広範囲(10μm×10μm)に走査して、しかも光学顕微鏡(OM)によって観察部位を決定することを試みた。その結果、リポソ-ム膜レプリカについてはTEM像と比較可能なSTM像を得た。このように、「生体膜直視用STM」は広範囲な走査ができ、かつOMとの組み合せによる位置確認が必要不可欠であることが明らかにされた。
次に、この条件を満たす「生体膜直視用STM」の開発を試みた。このSTMは走査範囲が最大20μm×20μmまで設定でき、かつ反射型OMとCCDカメラとを兼備することにより、STM観察部位の位置合わせが1μmの誤差の範囲で行えるものにした。そこでいよいよ我々は、グラファイト(HOPG)上に細胞を培養し、その細胞の細胞膜を生きている状態でSTM観察することを試みた。T24及びCHO細胞がHOPG上で培養可能であることが確認できたので、これらの細胞を用いた。また生かしておくために、常に培養液を供給して乾かすことがないように工夫し、STM観察を行った。その結果、世界で初めて生細胞膜の観察に成功し、膜表面上の凹凸を捕らえることが出来るようになった。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
水谷 亘 | 電子技術総合研究所 | 極限技術部 | 技官 |
清水 肇 | 電子技術総合研究所 | 極限技術部 | 室長 |
小野 雅敏 | 電子技術総合研究所 | 極限技術部 | 部長 |
浜 清 (濱 清) | 早稲田大学 | 人間科学部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
伊藤 悦朗 | 早稲田大学 | 人間総合研究センター | 助手 | (Kakenデータベース) |
鈴木 英雄 | 早稲田大学 | 理工学部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】試験研究(B)
【研究期間】1988 - 1990
【配分額】18,900千円 (直接経費: 18,900千円)